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タンパク質を盗んで能力を得る魚 / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部
biology

食べて「能力を盗む」魚、自分の遺伝子にない”光る”力を獲得

2026.06.03 11:30:47 Wednesday

生き物の能力は、基本的に「自分の遺伝子」によって作られています。

ところが東北大学の研究チームは今回、発光魚「キンメモドキ」が、自分では発光酵素を作らず、餌として食べたウミホタルから“光るためのタンパク質”を取り込んで利用していることを、全ゲノム解析によって強く裏付けました。

この魚は、発光に不可欠な酵素を作る遺伝子を持たないまま、他生物由来のタンパク質を使って光っていたのです。

研究成果は2026年4月1日付で科学誌『Scientific Reports』に掲載されました。

「盗んだタンパク質」で光る魚、全ゲノム解読に成功 -消化されないタンパク質の謎解明へ- https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2026/04/press20260402-02-genome.html
Absence of the luciferase gene in the genome of the kleptoprotein bioluminescent fish Parapriacanthus ransonneti https://doi.org/10.1038/s41598-026-43942-6

キンメモドキの光る力は「自分では作っていなかった」

キンメモドキは、日本の太平洋沿岸などに生息する体長7センチほどの小型魚です。(画像はこちら。※プレスリリース)

一見すると普通の群泳魚ですが、薄暗い環境では腹側が青に発します。

この発光は、海中で自分の影を消すために使われていると考えられています。

海では、月明かりのような弱い光でも魚の体に影ができます。

下から見上げる捕食者にとって、その影は格好の目印になります。

そこでキンメモドキは腹側を光らせ、下から見たときに自分の影を目立ちにくくしていると考えられているのです。

しかし、この魚の本当の奇妙さは「どうやって光るのか」にありました。

キンメモドキの発光では、「ルシフェラーゼ」という発光酵素が重要な役割を果たします。

普通なら、その酵素を作る遺伝子を自分のDNAに持っています。

ところがキンメモドキは、餌として食べるウミホタル類からルシフェラーゼを取り込み、そのまま利用している可能性が以前から示唆されていました。

研究チームはこれを「タンパク質(kleptoprotein)」と呼んでいます。

ただし、これまでは完全な証明には至っていませんでした。

もしかすると、キンメモドキ自身のゲノムのどこかに、まだ発見されていない発光遺伝子が存在する可能性もあったからです。

そこで今回、研究チームは最新のロングリードシーケンス技術を使用し、キンメモドキの全ゲノム約6.25億塩基対を高精度で解読しました。

さらに研究チームは、完成したゲノム配列だけでなく、遺伝子の候補リストや、ゲノムを組み立てる前の生データまで調べ、ウミホタル型ルシフェラーゼ遺伝子を探しました。

その結果、キンメモドキのゲノム中からは、ウミホタル類のルシフェラーゼ遺伝子は検出されませんでした。

加えて研究チームは、「遺伝子平伝播」の可能性も調査しています。

これは、他生物の遺伝子そのものを取り込む現象です。

しかし、その痕跡も確認されませんでした。

つまりキンメモドキは、発光酵素の“設計図”を取り込んだのではなく、餌から得た“完成済みタンパク質そのもの”を発光に使っていることになります。

そして、この異様な仕組みの本当の凄さは、「消化されないこと」にあります。

(次項では発光するキンメモドキの動画が確認できます)

次ページ「食べたタンパク質」を壊さず数か月使うという異常現象

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