精子を磁性化させて磁力で操ることに成功、しかも磁化した方が元気が長持ちした
精子を磁性化させて磁力で操ることに成功、しかも磁化した方が元気が長持ちした / Credit:Canva
biology

精子を磁性化させて磁力で操ることに成功、しかも磁化した方が元気が長持ちした

2026.06.18 17:00:46 Thursday

スペインのナノサイエンス研究機関(nanoGUNE)などで行われた研究により、精子に微小な磁気の粒をくっつけて”磁化”し、外から磁場をかけて方向を操れることを示しました。

さらに別の実験で、この磁化精子を培養皿の中で卵子と出会わせ、赤ちゃんの卵が着床前の胚の段階(胚盤胞)にまで育てることに成功しました。

この研究が目指す先にあるのは、「受精の場を体の中に近づける」という大胆な構想です。

卵子を体外に取り出して精子と引き合わせるのではなく、卵子は体内にあるままで精子だけを引っ張っていくという発想です。

もしこの技術が実用化すれば、将来的には体外受精の採卵や胚移植といった負担の大きい工程を減らせる可能性があり、不妊治療の常識を根底からひっくり返す可能性を秘めています。

研究内容の詳細はプレプリントサーバー『bioRxiv』にて発表されました。

In Vitro Fertilization using Magnetotactic Sperm Cells https://doi.org/10.64898/2026.04.23.720095

体外受精の「体外」が、実はネックだった

体外受精の「体外」が、実はネックだった
体外受精の「体外」が、実はネックだった / Credit:Canva

不妊に悩むカップルにとって、体外受精(IVF)は大きな希望です。

その仕組み自体は、原理的にはシンプルです。

女性の卵巣から卵子を取り出し、培養皿の上で精子と出会わせ、受精してできた胚(はい=赤ちゃんの卵の最初期の姿)を子宮に戻す。

体の外で受精させるから「体外受精」と呼ばれています。

しかし残念なことに体外受精の成功率は決して高くありません。

胚を子宮に戻してから着床する確率は、移植1回あたりおよそ20〜40%と報告されています。

では、なぜ成功率がもっと上がらないのでしょうか?

原因のひとつとして研究者たちが指摘しているのが、受精を「体の外」で行うこと自体の限界です。

精子と卵子が出会い、胚が育つ環境は、本来なら女性の卵管や子宮の中──温度、酸素濃度、さまざまな分泌液が精密にコントロールされた場所のはずです。

それをプラスチックの培養皿と人工培地で再現するのには、どうしても限界がありました。

また何度もの操作(採卵・体外培養・移植)を経るたびに、胚がダメージを受けるリスクも高まります。

近年では、体外受精で生まれた子供への長期的な影響や、さらにその次の世代への影響を懸念する研究も出はじめています。

もちろん体外受精が危険だという話ではなく、「人工環境で育てること」のリスクを完全には否定しきれない──そういう段階の議論です。

つまり、不妊治療のつらさの根っこには、「受精を体の外でやらなければならない」という避けられない問題が横たわっていたのです。

そこで研究者たちは「そもそも卵子を体の外に出さずに、精子の方を体の中で卵子のところまで届けてやればいいのでは?」という発想に至りました。

研究を率いるスペイン・CIC nanoGUNE研究センターのマリアナ・メディナ=サンチェス氏は「私たちの究極のアイデアは、生殖補助を体内で行うことです。身体を天然の培養器として活用するのです」と語ります。

次ページ精子を磁性化して卵子に導く

<

1

2

3

4

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

生物学のニュースbiology news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!