接触から19日後に異変
コウモリとの接触から19日後、少年には顔の右側のチクチクした感覚、しびれ、腫れが現れました。
その後、顔面まひも生じ、少年は診療所や救急外来を受診しました。
当初は、ヘルペス性歯肉口内炎やベル麻痺が疑われ、治療を受けて一度は退院しました。
しかし症状は悪化していきます。
少年は再び救急外来を受診し、待機中に発熱、錯乱、重い幻覚を起こしました。
容体は急速に悪くなり、気道を守るために挿管され、小児集中治療室に入院しました。
感染症の専門チームは、コウモリとの接触歴と神経症状から、狂犬病を強く疑いました。
MRI検査では脳幹に病変が見つかり、検査でも狂犬病が示されたといいます。
少年は最終的に脳幹機能を失い、入院から17日後に亡くなりました。
狂犬病は、感染した動物の咬傷や引っかき傷などを通じて広がるウイルス性疾患です。
主に中枢神経系に影響し、発症すると重い脳の障害を引き起こします。
問題は、症状が出始めた後では、ほぼ常に致命的になることです。
一方で、発症前に適切な処置を受ければ、狂犬病は予防できます。
その中心となるのが、曝露後予防、つまりPEPです。
PEPでは、傷の洗浄、抗体の投与、ワクチン接種などが行われます。
医師らは、狂犬病を防ぐ唯一の有効な手段は、曝露を早く認識し、適切なタイミングでPEPを行うことだと強調しています。
カナダで人間の狂犬病は極めてまれです。
報告によると、カナダでは1924年以降に記録された症例は28例とされ、オンタリオ州では1967年以来の症例でした。
しかし、まれであることは、無視してよいことを意味しません。
むしろ、日常的に意識されにくいからこそ、接触後の判断が遅れやすいのです。
コウモリと直接接触した場合、たとえ傷が見えなくても、医療機関で評価を受ける必要があります。
今回の症例は、「何も起きていないように見える接触」が、実は命に関わる感染リスクを含んでいる可能性を示しています。
狂犬病は、発症してから治す病気ではなく、発症する前に防ぐ病気です。
顔の上に乗っていただけ、傷は見えなかった、動物は攻撃的ではなかった。
そうした安心材料がそろっていても、コウモリとの直接接触では、すぐに医療機関へ相談することが命を守る分かれ道になるのです。

























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