右利きでも、右肘と左肘では同じくらい文字が下手だった
棒を使った実験だけでは、利き腕側の脳に生まれつき優れた能力がある可能性を完全には排除できません。
そこで研究チームは、日常生活ではほとんど経験しない方法で文字を書かせました。
それが、肘にペンを取り付けて文字を書く「肘書き」です。
右利きの人は右手で文字を書く経験を大量に積んでいますが、右肘で文字を書いた経験は、左肘と同じくほとんどありません。
もし右側の運動系全体が生まれつき優れているなら、初めてでも右肘のほうが左肘より上手に書けるはずです。
一方、技能が練習によって身につくなら、どちらも未経験である左右の肘に大きな差は出ないと予想されます。
実験には右利きの11人が参加し、利き手と非利き手、さらに利き側と非利き側の肘を使って、「A」と「8」をそれぞれ8回書きました。
研究チームは、書かれた文字を画像として取り込み、画像認識用ニューラルネットワークのResNet-50で形の特徴を抽出したうえで、文字の品質を比較しました。
その結果、手で書いた場合には、予想どおり利き手の文字が非利き手より整っていました。
ところが肘書きでは、利き側と非利き側の文字の間に、有意な差も、一方が優れているという一貫した傾向も見られませんでした。
右利きであっても、右肘が左肘より器用だったわけではなく、両方の肘が同じ程度に不慣れだったのです。
文字を書く速さを統計的に考慮しても、この結果は変わりませんでした。
さらに研究チームは、肘そのものが文字を書くのに向いていないだけではないかという可能性も検証しました。
別の右利き参加者12人を、利き側の肘を練習する6人と、非利き側の肘を練習する6人に分けました。
各参加者は、指定された側の肘で2400文字を練習します。
すると、練習後には左右どちらの肘も大きく上達し、非利き手で書いた文字よりも整った形を描けるようになりました。
しかも、利き側と非利き側で上達の程度に差はありませんでした。
つまり肘が不器用だったのは、肘に精密な動作を行う能力がなかったためではなく、文字を書く練習経験がなかったためだと考えられます。
では、これらの研究結果からどんなことが分かるのでしょうか。






























