白黒の回転円盤にAIも色を見出していた

AIは白黒のベンハムのコマを、どう見ていたのか。
研究者たちは、次の画像を予測するのに特化したAI(PredNet)を用い、ベンハムのコマを見せてみました。
このAIはChatGPTのような汎用AIではなく、次の瞬間の画像予測に特化しています。
まず、止まったコマを見せてみます。
このときは予想通り、AIが「次はこうなるはず」と描く予測画像にも、ほとんど色は現れませんでした。
ところが、コマを回して見せたとたんAIが描いた予測画像の、まさに弧の部分に、淡い色がふわりとにじみ出たのです。
しかも、本当に驚くべきはここからです。その色の出方が、人間そっくりの、あの几帳面なクセを持っていたのです。
一つ目は、場所によって色が変わること。内側と外側の弧とでは色が違います。
二つ目は、回す向きで色が入れ替わること。
三つ目、白地に黒ではなく、黒地に白にすると、色の位置がひっくり返ります。
ベンハムのコマをはじめて見る予測AIが、三つともそっくり再現してみせたのです。
AI訓練させる際には特に色については言及せずに、ただ「次の映像を当てなさい」と鍛えただけでもこうなってしまったのです。
まるで、人間の錯覚のクセの一部が、AIに”うつった”かのようです。(※研究チームは、この人工的に生まれた色を「人工主観色」と名づけました。)
この結果は、網膜のような特別な仕組みを組み込まなくても、「次を予測する」という働きから色が生じうることを示しています。
ではなぜAIも色を予測したのでしょうか?

答えを得るため研究者たちは、AIが学習した動画の中身を調べました。
AIは、「白黒のコマから色を出せ」とは教わっていません。
にもかかわらず弧に赤や青をにじませた。
ということは、その色のもとになった”何か”が、訓練のあいだにAIの中へ入り込んでいたはずです。
犯人は、AIが見せられていた訓練動画のどこかに潜んでいると考えるのが自然です。
そこで研究者たちは、AIに見せる訓練動画の”中身”を、少しずつ単純にしていきました。
すると、面白い変化が見えてきました。
いろいろな物が雑多に写る、人が歩きながら撮った自然な動画で育てたAIも、たしかに人間と同じような色を出しはしました。
ただし、その色は淡く、ばらつきも大きいものでした。いろんな色の物がごちゃまぜに動くので、AIの覚える”色のクセ”も、あちこちに分散してしまうのです。
コンピューターグラフィックスで作った「街を歩く人物」の3D動画で育てたAIになると、色はもう少し鮮明になりました。
雑多さが減った分だけ、色のクセが揃ってきたのです。
そして、映像を極限までそぎ落とし、ちらちらと色の変わる背景の中を、赤・緑・青のいずれか一色の四角形がただ動くだけの動画で訓練したAIが、決め手となる反応を見せました。
赤い四角形を見せて育てたAIは、白黒のコマの弧に、その赤に対応する色を強く出したのです。
緑や青の四角で育てたときも、学習した色に対応する色が現れる傾向が見られました。
ただし青のときは、出る色のばらつきも大きくなりました。
以上の結果から、訓練動画の中で「動いていた物の色」が、AIの見る幽霊の色を強く左右していたことがわかってきました。
ただし、話はここで終わりません。研究チームは続いて、この色を生む大もとの仕組みそのものに迫っていきます。






























