最も危険だったのは「別れの急性期」にいる若い男性
研究で特に目立ったのが、離婚が成立した男性よりも、まだ別居状態にある男性の自殺死亡オッズが高かったことです。
別居男性では既婚男性と比べて自殺死亡のオッズが4.82倍となり、さらに未調整のデータで離婚男性と直接比較すると1.96倍でした。
そして34歳以下の別居男性に限ると、同年代の既婚男性の8.63倍に達していました。
この結果は、パートナーがいない状態そのものよりも、関係が崩れ、生活が大きく変化している時期に心理的負担が集中する可能性を示しています。
実際、レビューに含まれたノルウェーの研究では、男性の自殺死亡オッズは別居届を提出してから0~30日で既婚男性の13.20倍と最も高く、31~92日で11.69倍、93~183日で8.08倍と、その後は時間とともに低下していました。
ただし13.20倍という数字は今回の研究全体をまとめた値ではなく、1つのノルウェー研究で得られた結果です。
では、この背景には、どのような要因があるのでしょうか。
今回集められた研究では、孤独や社会的孤立、羞恥心、感情をうまく調整できないこと、既存の精神的問題、失業などとの関連が示されていました。
特に研究者らが注目しているのが、男性の一部では恋人や配偶者が主要な「感情的な支え」になっている可能性です。
友人とは仕事や趣味について話していても、つらさや不安を打ち明ける相手がパートナーに集中していれば、別れによって恋人や配偶者だけでなく、最も重要な相談相手まで同時に失うことになります。
さらに、自立や感情の抑制を重んじる伝統的な男性規範を強く受け入れている人では、苦しい状況でも周囲に助けを求めにくくなる可能性があります。
また、別居によって自分を失敗者のように感じる羞恥心も、男性の自殺念慮との関連が報告されていました。
もちろんこれらの結果は、別れそのものが自殺を直接引き起こすと証明したものではありません。
研究ごとの方法には大きな違いがあり、とくに別居男性と離婚男性の直接比較は未調整のデータに基づいています。
さらに分析の中心は婚姻関係の別居や離婚であり、一般的な恋人同士の失恋や未婚カップルの破局については、まだ十分なデータがありません。
それでも今回の大規模レビューは、男性の自殺予防を考えるうえで、関係が終わった後だけでなく、まさに関係が崩れ、生活や人間関係が大きく揺れている時期こそ注意すべきタイミングであることを浮き彫りにしています。
































