18本の脚は、どこへ消えたのか
ではオール状の脚は、何のためにあったのでしょうか。
手がかりの一つは、チョシャが埋まっていた岩にありました。
この地層は、浅い海沿いの三角州や海岸に積もったものと考えられています。
研究チームは、この平たい脚が水中を進むために使われたか、あるいはエラのように酸素を取り込む役割を担っていたと考えています。
つまりチョシャは、水と陸の境目にある湿った場所で、どちらにも出入りできる体をしていたことになります。
こうした初期の昆虫たちは、腐った植物や菌類の胞子などを食べ、水辺に溜まった有機物を分解する側にいたようです。
腹に脚が並ぶこの体つきに、ティヘルカ氏は前から心当たりがありました。
正体がはっきりしないまま、長く宙に浮いていた化石がほかに3つあったのです。
スコットランドの4億500万年前の地層から出たレバーフルミアと、イリノイ州のマゾンクリークで見つかった、まだ名前のついていない2点。
どれも腹に、脚のような突起を持っていました。
そこでチームは、チョシャを加えた4つを、生きている昆虫や甲殻類、すでに絶滅した種と細かく突き合わせました。
どの特徴を分け合っているかを比べることで、生きものの家系図のどこに置くのが最も自然かを探ったのです。
現在生きているすべての昆虫が入るひとかたまりの、すぐ外側です。
家系図でいえば、昆虫たちの枝が伸び始める根元のそばで、祖先にあたる甲殻類の枝からはすでに遠く離れた場所でした。
この4つは、議論の余地のない最古の昆虫群になりました。
そしてそれは、記録が途切れる4億500万年前のレバーフルミアと、3億2400万年前のチョシャの存在は8000万年の空白のほぼ両端に、昆虫が存在していたことを示しています。

ではなぜ現在の昆虫は6本足に揃っているのでしょうか?
答えは生活する場所にあったと考えられます。
腹に並んだ脚のうち、後ろ寄りのオール状のものは、水の中でこそ働く装備でした。
陸に上がってしまえば、水をかく形の出番はありません。
持ち続ける意味も、そのぶん小さくなっていきます。
研究チームは、腹の脚が小さくなり、やがて失われていったことを、昆虫が陸で暮らす体へと変わるうえで重要な作り変えだったと見ています。
チョシャたちの系統そのものは絶滅しました。
しかし初期の昆虫の一群は生き残り、今日のカブトムシやハチやチョウへとつながっていきます。
ティヘルカ氏は、現在の標準である6本という数は、余分な脚を長い時間をかけて手放していった末に残ったものだと述べています。
昆虫が陸を制した歴史は、新しい体を手に入れる歴史であると同時に、水中時代の装備を降ろしていく歴史でもあったことになります。



























