胸までは、まぎれもなく昆虫だった

黒い岩に黒い化石が重なっていると、普通に光を当ててもぎらつきに邪魔されて細部が見えません。
そこで研究チームが使ったのが、反射のぎらつきを抑える撮影法(交差偏光)でした。
ぎらつきが引くと、黒いシミの中から昆虫の体が浮かび上がってきました。
胸は3つの節に分かれ、頭からはむち状の触角が伸びています。
体の後ろには長い尾が1本、それを挟むように尾が2本ついていました。
腹の先には、卵を産みつけるための硬い管(産卵管)もありました。
そして胸には、しっかり3対6本の歩く脚がそろっていたのです。
胸から上には、おかしなところが一つもありませんでした。
ところが腹の第1節から第9節までには、脚が1対ずつ、つまり18本も並んでいたのです。
それもただの突起ではなく、胸の脚と同じようにいくつもの節に分かれた、れっきとした脚でした。
しかも後ろ寄りの脚は先端が平たく広がり、オールのような形をしていました。
体そのものの長さは約3.2センチ、尾まで含めると約5センチ。
そのうえこの標本は幼生ではなく、産卵管をそなえた成体のメスでした。
エビの子どもと見なされていた化石は、40年ぶりに大人の昆虫として名前を与えられたことになります。
研究チームはこの新種を「チョシャ・プラエクルソル」と名づけました。
ナバホの創世神話で大地に最初に住んだのが昆虫のような生き物だったことにちなみ、ナバホ語で昆虫を意味する語とラテン語の「先駆者」を組み合わせた名前です。



























