オーロラの縁で、電波がまたたいていた

映像には、東西に長く伸びたオーロラの帯が南へ張り出す様子が写っていました。
オーロラは、宇宙から降り注ぐ粒子が上空の空気にぶつかって光る現象です。
降ってきた粒子は、ぶつかった空気から電子を叩き出します。
そのため光る帯の真下には電子がぎっしり詰まった帯ができ、この夜はほぼ西海岸から東海岸まで横たわっていたのです。
問題は、この電子の帯の南の縁でした。
縁では電子の濃さが崖のように急に落ち込み、そこに差し渡し数百メートルほどの細かなムラが次々に生まれていました。
このムラだらけの層を電波が通り抜けたときに起きることは、夜空の星がまたたく理由とよく似ています。
星の光は、空気のゆらぎを通り抜けるうちに強まったり弱まったりして、目にはまたたいて見えます。
オーロラの下を通るGPSの電波も、ムラをくぐるうちに同じように強まったり弱まったりしていました。
星のまたたきも電波のまたたきも、専門用語では同じ「シンチレーション」と呼ばれます。
GPS受信機は、衛星から届く電波をつかまえ続け、届くまでのわずかな時間差から自分の位置を割り出しています。
その電波が激しくまたたけば、受信機は信号を追いきれなくなり、時間差の読み取りも乱れます。
こうして生まれたのが、10メートルを超える位置のずれでした。
犯人がオーロラだという証拠は、時刻に残っていました。
西経94度の空では、11月12日の午前2時30分、3時7分、4時42分(世界時、アメリカ中部ではまだ11日の夜)にオーロラがひときわ明るく光っています。
そのたびに近くの観測点では電子の濃さとムラが最大になり、GPSの誤差が跳ね上がっていました。
しかも、その帯は止まっていませんでした。
オーロラの帯は秒速およそ340メートル、時速に直せばおよそ1200キロの勢いで南へ広がっていました。
その縁が通り過ぎる場所で、電波が乱れていたわけです。
こうして乱れが研究者の言う「強い」水準に達した範囲は、西経80度から120度という大陸をほぼ横断する帯に及びました。
中緯度でも、磁気嵐のときに電波のタイミングが小刻みに揺らぐ現象(位相シンチレーション)が起きることなら珍しくありません。
しかし、タイミングではなく強さそのものが明滅するまたたきとなると、話は変わります。
中緯度での観測例は一地点での報告が数えるほどしかなく、大陸をまたぐ規模で捉えられたのは今回が初めてです。






























