人工衛星を悩ませる「データの渋滞」

地球観測などを行う人工衛星は、機体の中で大量のデータを扱っています。
ところが、その生のデータを地上へ送ろうとすると、通信の混雑や帯域(一度に送れるデータの量)の限界がボトルネックとなり、何もかもが遅くなってしまいます。
これを乗り越える方法の1つが、データを送る前に、衛星の上でその場で処理してしまうことです。
ただし衛星に積むコンピューターには、大きさ、重さ、電力について厳しい制約があります。
そこで期待されているのが、光の粒である「光子(こうし)」を使う量子技術です。
光子どうしの干渉(波が重なって強め合ったり弱め合ったりする現象)を利用すると、ハードウェアの規模を増やさずに、大量のデータ処理に必要な機械学習のモデルを強化できるとされています。
ヴァルター氏らは、1つ1つの光子を使って複雑な操作を行う「量子フォトニック・プロセッサ」を、小さな光学部品で組み上げることにしました。
しかし、このアイデアを設計図から宇宙へ持ち出すのは、簡単なことではありません。
光子の干渉をうまく使うには、ただ光子を作るだけでは足りず、光子どうしを互いに「見分けがつかない」状態に保たなければならないからです。
たとえるなら、どこからどう見ても区別できない双子のように、2つの光子をぴったりそろえておく必要があるのです。
この条件はとても壊れやすく、ロケットの打ち上げや激しい温度の変化、放射線、真空にさらされる宇宙では、保つのが難しいとされてきました。
実際、光の量子状態はこれまでにも宇宙で作られ、安全な通信や物理の基礎的な検証に使われてきましたが、計算の資源として使われたことは一度もありませんでした。




















