宇宙に出た光の計算機は、本当に動いたのか?

宇宙へ向かった装置は、光子のペアを作る光源、6つの通り道(モード)を持つガラスの集積回路チップ、1つ1つの光子を捉える検出器、そして制御用の電子機器でできていました。
装置はSpaceXのファルコン9ロケットに載せられ、地球低軌道へと打ち上げられました。
その仕組みを簡単に見ていきましょう。
まず、レーザー光を結晶に通して、光子のペアを生み出します。
次に、その光子たちを小さなガラスの回路に送り込み、ごく小さなヒーターを使って、光子の進み方や干渉の仕方を操ります。
最後に、回路の反対側に置かれた高感度の検出器が光子を捉え、光子がどこから出てきたかを測ります。
回路の設定を変えれば光子に施す操作を切り替えられるので、この装置は「プログラムできる」量子の計算機になっているのです。
ところが、打ち上げのあとに思わぬトラブルが見つかります。
6つあった光子の検出器のうち半分が動かなくなり、使えるのは3つだけになってしまったのです。
それでもミッションは、中心となる目標を果たしました。
軌道に乗ってから最初の8か月の間に、装置は光子のペアを作り、操り、検出することに成功し、プログラムした複数の異なる操作を実行したのです。
さらに研究チームはチップの設定を変えながら光子を注意深く調整し、2つの光子が見分けのつかない状態になるようにしました。
そのうえで探したのが、「2光子干渉」と呼ばれる現象です。
この干渉が見えれば、装置が宇宙の中で「非古典的な光」、つまり量子ならではの性質を持つ光を作り、操り、捉えられていることの証拠になります。
その結果、研究チームは宇宙の過酷な環境の中でも、光子どうしの量子干渉を観測することに成功しました。
これは、量子コンピューターが宇宙で使われた初めての例とされています。
検出器の半分を失いながらも、繊細な光子の干渉は宇宙でも保たれていたのです。




















