■つらい出来事を「別の視点」からとらえる心理学的手法「リフレーミング」は、「貧しい人」ほどよく効くことが分かった
■低所得者層は、状況を変化させるための外的資源にアクセスしにくいため、コストのかからないこの手法と相性がいいことが考えられる
■どんな状況にもポジティブな側面を見出そうとする態度は「逃げ」につながるものであり、長期的な視点に立てば推奨されるものではない
心が不安定な時、皆さんは何をして落ち着かせますか?
そんな時、心理学者がよく提唱するテクニックが「リフレーミング」と呼ばれるもの。一言でいえば、ある出来事を「別の視点からとらえる」といったテクニックです。
たとえばあなたが恋人との「つらい別れ」を経験したときに、その出来事を「新たな趣味との出会いのきっかけ」と受け取るように努めるとき、あなたはリフレーミングによってポジティブな自分を取り戻そうとしているのです。
最近広く認知されるようになってきたこの手法ですが、果たして本当に効き目はあるのでしょうか?アメリカのノースウエスタン大学の研究者らが調査を実施しています。
Anxiety: Laboratory-Based and Longitudinal Evidence
https://www.apa.org/pubs/journals/releases/emo-emo0000539.pdf
■リフレーミングは「条件付き」で効果的
結果からいえば、確かにリフレーミングには一定の効果がありました。しかし、そこにはある興味深い「条件」があったのです。
研究を進める中で判明したのは、リフレーミングは「貧しい人」にほど効果的であるということでした。逆に言えば、「裕福な人」には効きにくいということでもあります。
調査では、「年収35,000ドル(約390万円)」以上稼ぐ人は、リフレーミングによる恩恵はあまり受けられないという結果が出たのです。
その要因について、研究をおこなったクラウディア・ハーゼ教授は、「貧しい人々は、ストレスフルなシチュエーションを変化させるための外的資源にたどり着きにくいため、自分自身の中に(リフレーミングによって)そのきっかけを見出している可能性がある」と語っています。