初めて経験するにもかかわらず、突然「前にも同じことがあった」と感じる奇妙な感覚に心当たりはないでしょうか。
それはフランス語で「すでに見た」と言う意味の、デジャヴと呼ばれるもの。しかし最新の研究によると、それは未来予知でも前世の記憶でもなく、すでに見た「気がする」というだけのことでしかないようです。
http://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0956797617743018
デジャヴの原因には多くの説があり、生前にその場所を訪ねたことがあるとする超自然的な説、または夢の中で訪れたことのある場所だとされる説、そして前頭葉で起きた小さな発作が原因とする説などが広く議論されています。
しかし最も受け入れられている説は、それが記憶と関わっているというものでしょう。それは口の先まで出かかっている言葉のようなもので、心に浮かび上がりかけているけれども、アクセスできないある種の記憶のことを指します。
コロラド州立大学の認知心理学者アンネ・クレリー氏が研究していたのが、まさにこの説。彼女は新たな論文で、デジャヴに伴う虫の知らせの感覚が単なる感覚に過ぎないことを実証しました。
デジャヴを経験している人が、次の角の先に何があるのかを正確に予測できないのは、闇雲に推測している人の推測となんら変わりはないのです。
他の研究者もデジャヴは記憶と結びついていることを証明していますが、クレリー氏の過去の独自研究によると、よく知っているという感覚(熟知性)が引き金となります。
すぐに浮かぶ具体的な記憶がなくても、似たような街並みの配置、空間的な配置、または顔の配置であれば、同じものに見える可能性があります。
「意識的に前見た風景を思い出すことはできませんが、私たちの脳は類似性を認識します。その情報は、以前そこにいたことがあるのではないかという不安な感覚を呼び起こします。しかし、それがいつだったのか、なぜなのかを絞り込むことはできないのです」とクレリーは言います。
「私の作業仮説はこうです。デジャヴはよく知っているという感覚の特徴的な表れです。本来感じるべきでないときにこの感覚を感じるということが、デジャブを不快で、印象的にさせている原因なのです」
クレリー氏によると、逸話的な報告によって、デジャヴには未来を予測できるという強い感情を伴うことがよくあることが示されています。そして、大脳皮質側頭葉を刺激することでデジャヴを引き起こしたという1959年の実験では、参加者はまた虫の知らせの感覚を感じていたことが報告されています。
そこでクレリー氏は過去の研究を発展させ、コンピューターゲームである「The Sims」の中に、空間的には同一ですがテーマが異なった環境(庭や廃品集積場など)をつくり、298人の被験者に試験を行いました。他の研究では、こういった配置の重複は参加者にデジャヴの感覚を引き起こすことが証明されています。
まず一連の風景を一人称視点で歩き通す模様が収められたビデオを参加者に見せます。ビデオの各導入部では、女性の声でその風景の名前(廃品集積場や水族館)が繰り返されます。
それから、一連のテスト用のビデオを見せます。このビデオは最初に見せたものとは表面上異なっていますが、その半分は配置が全く同じにしてあります。ある評価地点で、参加者を止め、デジャヴを経験しているか、そして、次の曲がり角で自分がどこにいるのかわかるかを聞きました。
すると約半数の参加者が、デジャヴに伴う虫の知らせの感覚を感じたと報告したのです。しかし彼らは、ランダムに選ばれた参加者同様、正しい答えを思いつくことはありませんでした。
よって未来を予知できるという感覚は、本物ではないようです。
クレリーとそのチームはデジャヴの虫の知らせが後知恵バイアスを伴っているのかを、次の研究として調べるつもりです。後知恵バイアスよって人々は事実が明らかになった後で、何が起こるのかを知っていたという確信を持つようになります。
少しロマンのないお話ですが、デジャブが「平行宇宙」や「多元宇宙」から来ている記憶だとする理論物理学者もいることですし、今後の研究に期待しましょう。
via: Science Alert/ translated & text by Nazology staff