
太陽にも雨が降るって知っていましたか?
もちろん、降るのは水滴じゃありません。電離した気体(プラズマ)の熱い塊がコロナから太陽表面に降り注ぐのです。その温度は数10万度にも達します。熱いなんてもんじゃありません。遠目で見る分にはしだれ柳の花火みたいできれいですが、仮に地球に降るとしたら…?
コロナの雨は太陽活動の正体を探る上で鍵となる現象です。太陽表面で100万度に過熱されたプラズマは磁力線に沿って駆け上がり、はるか上空で冷えて太陽に降り注ぎます。このときのメカニズムを追うことで、太陽周辺の熱活動をよりよく理解できると期待されています。
太陽フレアのあとにコロナ上層から降り注ぐ雨がしばしば観測されていましたが、2017年にNASAゴダード宇宙飛行センターの研究チームは、思いもよらない場所で小さな雨を発見しました。この「棚ぼた」の発見が、太陽活動にまつわる2つのナゾを解く鍵になるかもしれません。
研究の詳細は4月5日付の「The Astrophysical Journal Letters」に掲載されています。
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/ab0c5d/meta
「苦行」の末の発見
研究チームの一員である大学院生のエミリー氏は、来る日も来る日も太陽の画像をチェックし続けていました。探していたのはヘルメット・ストリーマ(かぶと型の磁力線ループ)に降る雨。計算上ではそこに雨が降るはずなんですが、一向に姿を見せません。
ある日、探していたのとはぜんぜん別のところにちっぽけな雨を見つけます。「これじゃないんだよね…」という思いだったのでしょう、ミーティングに現れたエミリー氏は「ぜんぜん見つからない。なんか別のところにはしょっちゅう見えるんだけどね」とそっけなく報告します。それを聞いたメンバーは仰天。
「ちょっとなにそれ。誰もそんなもの見たことない」