NASAのデータは私たちがブラックホールの中に住んでいる可能性を示唆している
NASAのデータは私たちがブラックホールの中に住んでいる可能性を示唆している / Credit:Canva
space

NASAのデータは私たちがブラックホールの中に住んでいる可能性を示唆している

2025.03.21 17:00:30 Friday

アメリカのカンザス州立大学(KSU)で行われた研究によって、NASAが誇るジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の最新観測データから、にわかには信じがたい――しかし非常に魅力的な仮説が再び浮上しています。

それは「私たち自身の宇宙が、実はブラックホールの内部にあるのではないか」というものです。

遠く離れた銀河の回転方向を分析した結果、これまでの常識とは異なる“偏り”が見つかったことで、宇宙は果たして一様かつ等方的なのかという疑問が新たに生まれつつあります。

もし本当にブラックホールの中に私たちが住んでいるとすれば、ブラックホールが持つ強大な重力や回転(スピン)が、巨大なスケールで銀河分布を決定している可能性も考えられます。

これまでの宇宙論が説明に苦しんできた「宇宙膨張の速度(ハッブル定数問題)」や「ダークマターの正体」に関する一連の謎も、こうした視点によって思わぬ解が見つかるかもしれません。

研究者たちは「この現象の原因はまだ明らかではありませんが、主に2つの説明が考えられます。1つは、宇宙は回転しながら生まれたというものです。この説明は、宇宙全体がブラックホールの内部にあると仮定するブラックホール宇宙論などの理論と一致します。」と述べています。

NASAの新データがもたらしたこの大きな問いは、宇宙の始まりと終わり、そして私たちの存在そのものを大きく揺るがしていますが、果たして私たちは本当にブラックホールの中にいるのでしょうか。

研究内容の詳細は『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society』にて発表されました。

The distribution of galaxy rotation in JWST Advanced Deep Extragalactic Survey https://doi.org/10.1093/mnras/staf292

意外と知らない“回転”の重要性

NASAのデータは私たちがブラックホールの中に住んでいる可能性を示唆している
NASAのデータは私たちがブラックホールの中に住んでいる可能性を示唆している / ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した深宇宙の画像で、各銀河の回転方向が色分けされています。 赤いマーカーは、天の川銀河と同じ方向に回転している銀河を示し、青いマーカーは反対方向に回転している銀河を示しています。 画像全体を見ると、青い銀河が圧倒的に多いことが一目で分かり、銀河の回転方向に明らかな不均衡があることを直感的に理解できます。 この視覚的な偏りは、宇宙が完全にランダムで等方的な構造を持つという従来の考えに疑問を投げかけ、新たな宇宙の大規模構造やブラックホール内宇宙説など、未知の現象を示唆しているのです。/Credit:Lior Shamir . Monthly Notices of the Royal Astronomical Society (2025)

私たちの宇宙は、どの方向を見ても同じような構造を持つ――これを「等方性」と呼び、現在の標準的な宇宙論では当然の前提とされています。

ところが、もしある方向に回転する銀河が偏って多い、もしくは少ないとわかったらどうでしょう。

宇宙をまんべんなく観測したつもりでも、何らかの“ゆがみ”が潜んでいるかもしれません。

銀河の回転方向は、その“ゆがみ”を見つけるうえで非常に重要な手がかりになるのです。

従来の地上望遠鏡による観測でも、銀河の回転方向に偏りがあるらしいという話はたびたび持ち上がってきました。

しかし、当時は観測データが少なかったり、画像の解像度や解析方法もさまざまだったりして、「これだ」と断言できるレベルには届きませんでした。

それでも近年、宇宙の初期段階にすでに巨大な銀河が存在していたり、ハッブル定数(※1)の値が理論予測と食い違ったりといった、標準宇宙論にとって都合の悪い(あるいは刺激的な)事例が増えています。

これらの謎の解決策として、宇宙そのものがブラックホールの内部にある、という大胆な仮説が再評価され始めたのです。

ブラックホールは極めて強い重力と回転(スピン)を持ちます。

もし宇宙全体がブラックホールの中にあるのだとしたら、その回転軸が銀河たちの並び方や回転方向にも影響を与えているのかもしれません。

そう考えると、これまで説明しきれなかった数々の現象も、新しい角度で理解できる可能性があります。

実際、「ブラックホール内宇宙」という発想をとると、暗黒物質(※2)や暗黒エネルギー(※3)に頼らずに銀河の回転や宇宙膨張を説明できるかもしれない、という議論もあるのです。

そこで今回、研究者たちはジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の大型観測プロジェクト「JWST Advanced Deep Extragalactic Survey(JADES)」によって得られた深宇宙の写真を徹底解析し、膨大な数の銀河が実際に「どちら向きに」回転しているのかを調べることにしました。

(※1)ハッブル定数: 宇宙がどれくらいの速度で膨張しているかを示す値。観測方法によって異なる値が得られ、「ハッブル・テンション」と呼ばれる大きな議論を呼んでいる。

(※2)暗黒物質(ダークマター): 銀河の回転速度などを説明するために想定された目に見えない物質。直接観測ができないため謎が多い。

(※3)暗黒エネルギー(ダークエネルギー): 宇宙の加速膨張を説明するために仮定されたエネルギー。これも正体不明で、観測ではその影響だけが見える。

次ページ奇妙な偏りは私たちがブラックホールの中に住んでいることを示す

<

1

2

3

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

スマホ用品

宇宙のニュースspace news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!