奇妙な偏りは私たちがブラックホールの中に住んでいることを示す

調査に当たってはまず、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の大型観測「JADES」で撮影された深宇宙の銀河画像を、まるでコーヒーに浮かんだ渦を観察するように見比べて、銀河の回転方向を次々に調べるというものです。
まず、複数の波長で撮影された鮮明な写真を用意し、銀河中心から外側に向かう光の強さの変化をチェックすることで、腕の渦がどちら向きに巻いているかを自動で判定しました。
銀河の渦は「トレーリングアーム(後ろ向きの腕)」と呼ばれる構造を持っていることが多く、その形状を利用すると回転方向が高い確度でわかるのです。
加えて、元の画像を左右反転させたうえで同じ解析を行い、もし人間の目や機械が「同じ方向ばかり選んでしまう」癖を持っていないかも検証しています。
こうして最終的に約260ほどの銀河が解析対象となりましたが、そのうち「私たちの天の川銀河と同じ方向に回転しているもの」より、「逆方向に回転しているもの」の方が、なんと50%ほど多いという衝撃的な結果が得られました。
統計的にも偶然とは考えにくい約3.39σ(p値にして約0.0007)もの有意差が出ており、明らかな偏りといえます。
特に画期的だったのは、深宇宙の高い赤方偏移領域(=宇宙の初期にあたる時代)の銀河まで大規模に比較できた点です。
宇宙が本当に「どこから見ても同じ構造をしているのか?」という問いに対して、これほど高精度かつ大量のデータで踏み込む試みは前例が少なく、「ブラックホールの内部にいるのではないか」という壮大な仮説も、実際の観測データをもとに検証し始めることが可能になったからです。