モザイクの写しから、「ヒョウに立ち向かう女性戦士」の姿が浮かび上がる
今回の研究の出発点になったのは、フランスで1860年に見つかった大型モザイク(小さな石やガラス片を敷き詰めて絵や模様を表現した装飾)です。
このモザイクは3世紀のものとされ、剣闘士や猛獣、闘技場の場面を描いた35のメダリオン(円形や菱形などの枠で区切られた装飾的な絵の区画)で構成されていました。
ところが、この貴重なモザイクは1917年、第一次世界大戦中の爆撃でほとんど失われてしまいます。
現在残っているのは一部の断片だけで、全体像は発見者の考古学者ジャン・シャルル・ロリケが1862年に残した写しによってしか知ることができません。(実際の画像はこちら※論文)
この失われたモザイクの中に、ヒョウと向き合う一人の人物が描かれていました。
右手には鞭を持ち、猛獣に対して身構えているように見える場面です。
これまでこの人物は男性だとみなされることが多く、動物を煽る係のような存在ではないか、あるいは鞭を持つ道化的な闘技場の人物ではないかと考えられてきました。
ですが、UCBの研究者はこうした従来の解釈を見直しました。
論文では、そもそも「動物を煽る係」という役割はローマ闘技場の実在の役職として確認できず、また道化的な人物なら必要な棒や腕当てが描かれていないため、この人物には当てはまりにくいと論じています。
また、現存するモザイク断片と19世紀の写しがきちんと一致しているかを確かめたうえで、問題の人物の胸の描写、手に持つ鞭、左手に見える物体、そして隣のヒョウや周囲の人物との位置関係を詳しく検討しました。
特に重要だったのは、この人物の体つきです。
写しでは胸が目立つ形で表現されており、論文では他の男性人物の平坦な胸と比べて、女性であることを示すための意図的な描写だと解釈されています。
さらに、この人物はただ猛獣のそばに立っているだけではありません。
右手には鞭があり、左手には短剣の柄頭のようにも見えるものがあります。
少なくとも「武器を持って猛獣に立ち向かう側の人物」なのです。
ローマには罪人を猛獣に襲わせる刑罰がありましたが、その場合、罪人は武器を持たされず、縛られたり、ほとんど無防備な状態で獣の前に出されるのが普通でした。
今回の人物はそうした処刑される側ではなく、猛獣戦に参加する側だった可能性が高いと考えられます。
こうした点から論文は、この人物を女性の猛獣戦士、いわゆる「ヴェナトリクス(venatrix)」として解釈します。
さらに詳しく言えば、彼女は単に猛獣と戦うだけでなく、ヒョウを別の戦士の方へ追い込む補助役を担っていた可能性があるとされています。
では、今回の発見にはどんな意義があるのでしょうか。



























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