コロナの雨から2つのナゾを探る

コロナは太陽表面とくらべて300倍も高温で、これは太陽物理学の大きなナゾの1つです。コロナの雨は大きな熱変化を伴う現象なので、太陽コロナの熱源を解明する鍵になると期待されています。
ゴダードのチームはこれに加えて「遅い太陽風」の発生メカニズムを探るという目標を持っていました。二兎を追っていたわけですね。観測によると、「遅い太陽風」の一部はヘルメット・ストリーマから発していて、宇宙空間に放たれるためにはまず極端な温度まで熱せられてから冷やされる必要があります。コロナの雨はこれに一枚噛んでいると思われたのです。
エミリー氏がヘルメット・ストリーマよりはるかに小さい磁力線ループにコロナの雨を発見したことで、コロナの加熱がこれまで考えられていたよりも低い高度で局所的に起きていることがわかりました。

ヘルメット・ストリーマで雨が見つからないのは予想外でしたが、もう1つ予想外のことがありました。それまでの常識では、コロナの雨は太陽表面上の2点をつなぐ閉じた磁力線(ループ)にだけ発生するはずでしたが、エミリー氏は一方の端が宇宙に向かって開かれた磁力線にも雨が降ることを発見したのです。彼女たちのチームはこれを「磁気リコネクション(再結合)」によって説明しました。
二つの磁力線がぶつかると、交差したポイントで瞬間的に磁力線が切れ、つなぎ変わって再結合することがあります。閉じていた磁力線の一端が再結合で開かれると、蓄積されていたエネルギーが宇宙空間に一気に解き放たれます。これが大規模に起こると太陽フレアやコロナ質量放出になると考えられています。
太陽表面近くの小さな雨でもリコネクションが起き「遅い太陽風」を発生させている、というのがゴダードのチームが出した結論です。