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Credit: MIT – Exclusive: A record-breaking baby has been born from an embryo that’s over 30 years old(2025)
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【世界最長記録】30年冷凍保存されていた受精卵から、ついに赤ちゃんが誕生

2025.08.04 12:00:20 Monday

30年前に「未来の命」として凍結された受精卵が、いま命を授かりました。

人類史上、最も長く冷凍保存された受精卵から赤ちゃんが誕生した瞬間です。

アメリカ・オハイオ州に住むリンジーさんとティムさんのピアース夫妻のもとに、2025年7月26日、「セディアス・ダニエル・ピアース(Thaddeus Daniel Pierce)」くんという赤ちゃんが生まれました。

しかしその受精卵が作られたのは1994年のこと。

当時、父親となるティムさんはまだ幼児でした。

この出来事は「30年以上冷凍保存された胚(受精卵)からの出産」という世界記録を打ち立てただけでなく、生命と時間の境界を問い直すきっかけにもなりそうです。

いったい、どのような経緯でこの“時を超えた命”が生まれたのでしょうか?

Exclusive: A record-breaking baby has been born from an embryo that’s over 30 years old https://www.technologyreview.com/2025/07/29/1120769/exclusive-record-breaking-baby-born-embryo-over-30-years-old/#:~:text=The%20embryos%20were%20created%20in,Christian%20%E2%80%9Cembryo%20adoption%E2%80%9D%20agency.&text=A%20baby%20boy%20born%20over,for%20the%20%E2%80%9Coldest%20baby.%E2%80%9D World’s ‘oldest baby’ born from embryo frozen in 1994 https://www.theguardian.com/society/2025/jul/31/worlds-oldest-baby-born-embryo-frozen-1994-ivf

30年前の「小さな希望」が、未来へとつながるまで

話の始まりは1990年代初頭にさかのぼります。

米オレゴン州に住んでいた女性のリンダ・アーチャードさんは、6年間にわたる不妊治療の末、体外受精(IVF)に望みを託しました。

当時はまだ珍しかった医療技術に、不安を抱きながらも挑戦したのです。

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提供者のリンダさん/ Credit: MIT – Exclusive: A record-breaking baby has been born from an embryo that’s over 30 years old(2025)

そして1994年5月、4つの受精卵が作られました。

そのうち1つを子宮に戻した結果、健康な女の子が誕生しています。

しかし残る3つの胚は、液体窒素のタンクの中で冷凍保存されることになりました。

リンダさんはこの胚を「私の3つの小さな希望」と呼び、将来また子どもを持つ夢を託していました。

当時の夫との離婚後も胚の保管権を得て、30年間にわたり年間1000ドル近い保管費用を支払い続けたといいます。

ですが、どんどん高齢に差し掛かっていく中で、リンダさんは悩み始めます。

「自分がこの胚を使う可能性はどんどん低くなっていく。廃棄することも、研究目的に提供することもしたくない」

「それは私のDNAであり、すでに生まれた娘のきょうだいなのだから」と。

そんなとき彼女が知ったのが、キリスト教系の団体が提供する「胚の養子縁組」制度でした。

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