「汗をかく」ようにして建物を冷やす新塗料を開発
地球温暖化の進行とともに、都市部ではヒートアイランド現象が深刻化し、建物内の冷房需要が増加の一途をたどっています。
国際エネルギー機関(IEA)によれば、世界の建物の電力使用量の約20%が冷房に使われています。
電力消費が増えれば、CO2排出も増加し、温暖化がさらに進行するという悪循環に陥ります。
この問題を解決する鍵として注目されているのが「パッシブ冷却技術」という、電力を使わず自然の仕組みで建物を冷やす手法です。

その技術の1つに建物を「冷却する塗料」が存在します。
従来の冷却塗料の多くは「放射冷却」に依存していました。
これは、塗装面から赤外線を放射し、宇宙の寒冷な空間へと熱を逃がす仕組みです。
特に屋根など、空を向いている面では高い効果を発揮します。
しかし、この仕組みには大きな弱点があります。
湿度が高い地域では空気中の水蒸気が赤外線を吸収し、熱が逃げにくくなるため、効果が大きく低下するのです。
また、放射冷却は空を向いた面に限られるため、ビルの側面などでは期待されるほどの効果を発揮できません。
そこで南洋理工大学は、新たな冷却塗料「CCP-30」を開発しました。

この塗料の最大の特徴は、放射冷却・蒸発冷却・太陽反射という三つの冷却メカニズムを同時に備えている点です。
特に注目できるのは、「蒸発冷却」を採用している点です。
CCP-30は、セメントを基盤とした構造にナノ粒子を組み込んだ多孔質素材で、水分を塗料の内部に、重量の約30%まで保持できます。
そして吸収された水分は時間とともに蒸発し、その際に表面の熱を奪うのです。
これはまさに人間が汗をかいて体を冷やすのと同じ仕組みです。
また、水分を保つために塗料には微量のポリマーと塩分が加えられており、これがヒビ割れ防止や長期的な水分保持に貢献しています。
空気中の湿度や雨から水分を吸収し、自己補水機能を持つため、長期間にわたり安定した冷却性能を発揮できるのです。
さらにこの塗料は、88〜92%の太陽光を反射し、95%の熱を赤外線として放出する能力も持っています。
では、実際に新しい塗料を用いると、どれだけの冷却効果があるのでしょうか。