遺伝子組み換え酵母が「尿から高価な物質」を生成する

ハイドロキシアパタイト(HAp)は、骨や歯の主成分であり、医療現場では骨や歯の修復材として広く使用されています。
人間や動物では、骨を生成する特殊な細胞「骨芽細胞」が、体内でカルシウムとリンを集めてHApを生成しています。
しかし、このHApを人工的に作ろうとすると、同じような条件を再現するのが難しく、細胞を使った製造には時間と費用がかかります。
そのため、HApは高価な素材として扱われています。
そんな中で注目されたのが、酵母という身近で育てやすい微生物です。
今回の研究では「サッカロマイセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)」という酵母に着目しています。
この酵母は骨芽細胞とよく似た働きをし、周囲の環境からミネラルを回収して蓄える能力があります。

そこで研究チームは、この酵母の遺伝子組み換えに着手。
尿に含まれるカルシウムとリンを取り込み、ハイドロキシアパタイト(HAp)に変換されるよう設計しました。
この遺伝子組み換え酵母は、「Osteoyeast(”骨酵母”の意。本記事でもそう呼びます)」と名付けられました。
実験では、1リットルの尿から1グラム以上のHApが得られたと報告されており、この変換効率は今後研究が進むにつれて向上すると考えられます。
では、この新しい技術は、私たちの生活にどのような影響を及ぼすのでしょうか。