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太陽を反射し水分を集める屋根塗料 / Credit:Canva
science

太陽光を97%反射し”空気中の水分を集める”新塗料を開発

2025.11.04 11:30:18 Tuesday

都市のヒートアイランド現象、冷房費の高騰、そして水不足。

こうした悩みが当たり前になりつつある今、「屋根に塗るだけで家が涼しくなり、水まで生み出してくれる」という技術が現実になろうとしています。

オーストラリア・シドニー大学とスタートアップ企業Dewpoint Innovationsの研究チームが発表したのは、太陽光の97%を遮断し、空気中の水分を“水”として集めることができる新しい塗料です。

この画期的な発明の詳細は、2025年10月30日付の科学誌『Advanced Functional Materials』に掲載されました。

This roof paint blocks 97% of sunlight and pulls water from the air https://newatlas.com/materials/roof-paint-blocks-sunlight-collects-water/ Cooling paint harvests water from thin air https://www.scimex.org/newsfeed/cooling-paint-harvests-water-from-thin-air
Passively Cooled Paint-Like Coatings for Atmospheric Water Capture https://doi.org/10.1002/adfm.202519108

「塗るだけで涼しく、水までできる」新しい塗料のしくみ

今回の研究が目指したのは、「エネルギーを使わず、建物を冷やし、しかも空気中の分を効率よく集める」ことです。

背景には、世界各地で深刻化する水不足、そして都市部を悩ませるヒートアイランド現象の問題があります。

これまでにも、白い塗料で屋根を覆うことで太陽を反射し、室温上昇を防ぐアイデアはありました。

しかし従来の塗料は主顔料として酸化チタンなどを使って紫外線を反射しており、経年劣化や環境負荷の問題がつきまとっていました。

今回登場した塗料は、一見すると同じような白いペンキのようですが、中身はまったく異なる仕組みでできています。

主成分「ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン),PVDF-HFP」で作られた多孔質コーティングです。

この塗料には無数のナノサイズの微細な孔があり、これが光をあらゆる方向に拡散して、太陽光の97%を反射します。

しかも、熱を電磁波として宇宙空間に放射する「放射冷却」も効率よく行えるため、真夏の直射日光下でも塗った面は外気温より最大6℃低く保たれるのです。

そしてこの温度差により、空気中に含まれる水蒸気が塗料表面に小さな水滴となって現れます。

これはちょうど、お風呂上がりに鏡が曇るのと同じ仕組みです。

この塗料のもう一つの特徴は、「水滴が滑らかに転がり落ちる」ような表面構造を持っていること。

そのため、できた水滴は自然に集まり、屋根やパネルの端に設置した集水システムに効率よく流れ込むよう設計されています。

では、この「空気から水を集める」塗料は、どれほどの水を生み出すのでしょうか。

次ページ1日4.7L集める屋根へ。様々な用途で活躍するかも

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