子どもに注意を聞いてくれる大人と聞いてもらえない大人
子どもが思春期になると、親や教師の注意やアドバイスがうまく伝わらなくなる場面が増えてきます。
たとえば、夜遅くまでスマートフォンを使っている子に「もう寝なさい」と言っても、「うるさいな」と反発されたり、無視されたりすることは珍しくありません。
従来の子育てや教育の現場では、「とにかくしっかり注意する」「危ないことは厳しく叱る」といったアプローチが多くとられてきました。
しかし、これだけではうまくいかないことが多いのが現実です。
なぜなら、単に禁止や警告だけを繰り返すと、子どもは「コントロールされている」と感じて逆らいたくなる傾向があるからです。
心理学では、人には自分の行動を自分で選びたいと感じる「自律性」や、誰かと良い関係を築きたいという「関係性」、自分にもできるという「有能感」といった基本的心理欲求(need support)があるため、この感覚を無視するような忠告は、聞き入れづらく反発を誘発するとされています。
特に思春期には「自律性」を求める気持ちが強くなり、大人からの注意や忠告が一方的だったり押し付けがましいと感じると、反発や反抗的な態度につながりやすくなります。
とはいえ、すべての注意や警告が反発をまねくわけではありません。
「危ないからダメ」とだけ言うよりも、「なぜ危ないのか」「どうすれば安全か」を伝えることで、子どもが納得しやすくなる場合もあります。
また、大人が普段からどのようにふるまっているかによっても、子どもが受け取る印象は大きく変わる可能性があります。
学校でも素直に注意を聞いてもらえる先生がいる一方で、いくら注意しても聞いてもらえない嫌われ者の先生もいます。
確かに頭ごなしに叱れば嫌われるのは確かでしょうが、本当に要因はそこだけなのでしょうか? もっと他に大人の特性に関係するものがあるのでしょうか?
そこで研究チームは、イスラエル南部の中高生105名(平均年齢14.9歳、女子57.1%)を対象に、親から受けた注意や警告がどのように感じられ、どんな反応につながったかを詳しく調べました。
この注意を受けた項目については、「門限を破る」「親に隠れて外出する」「飲酒や喫煙」「スマホの使いすぎ」など、思春期の子どもによく見られる“親から注意を受けやすい行動”全般が対象とされています。
調査では、まず子どもたちに「最近、自分がしてしまった最も深刻な問題行動」について思い出してもらい、そのとき親がどんな反応を示したかを具体的に尋ねています。
たとえば、「もうそんなことをしたらスマホを取り上げるよ」といった警告や、「なぜそんなことをしたの?」と気持ちを聞き出す姿勢など、さまざまな対応が集められました。
さらに研究チームは、親が普段から自分の価値観をどの程度行動で示しているかについても、「親は大切なことを口で言うだけでなく、行動でも示している」などの複数の質問項目を用いて、子ども自身の印象を尋ねました。
こうして大人の「価値の体現(inherent value demonstration)」が子どもの反応にどう影響するかが分析されたのです。
このようにして、今回の研究では親の忠告や注意が「反発を招く」条件と「素直に受け止められる」条件が調査されたのです。