Point
■周囲の木々から水や栄養分を得ることで生存している1本の切り株がニュージーランドで発見された
■「木が切り株になる以前に接ぎ木が行われた」と仮説
■木と木が結びつくことでより強固に地面に固定され、より均衡の保たれた栄養源の分配が可能に
まさに気になる木。
ニュージランドにある1本の切り株が、根を周囲にある他の木々に接ぎ木して、そこから水や栄養分を得ることで生きながらえていることが分かりました。
オークランド工科大学のセバスチャン・レウツィンガー、マーティン・ベイダー両氏による論文が、7月25日付けで雑誌「iScience」に掲載されています。
https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(19)30146-4
木が織りなす社会
発見のきっかけは、2人がオークランド州の郊外をハイキングしていた時、奇妙な切り株に遭遇したことでした。
この地域によく生息するカウリマツという種の切り株が存在すること自体は驚きではありませんが、彼らの度肝を抜いたのは、その切り株が1枚も葉を付けていないのに生きていることでした。
木の生存と成長には光合成が不可欠ですが、葉がなければ光合成は行われないため、理論上は生きることができないのです。
そこで研究チームは、切り株とその周囲にあったすべて同じ種に所属する木々の水の流れを測定しました。すると驚いたことに、切り株に流れていた水は周囲の木々から移動して来ていたのです。このことは、木と木が互いに接ぎ木され、周囲の木々がそれを支えていることを意味します。
これは、「大気の水ポテンシャルによって機動される水が流れる」という通常の木々の機能とはまったく異なります。この切り株は蒸散する葉を欠いているわけですから、周囲の木々に頼るしかありません。