- 脳内で「意識」を担当している場所が視床内部の外側中心核にあるとわかった
- 麻酔によって眠っているサルの外側中心核を電極刺激すると目覚め、電流をとめるとまた眠りについた
- 意識の場所がわかったことで、昏睡状態にある人を助けられるかもしれない
これまで意識が脳の産物であることはわかっていても、脳の「どの部分」が意識を担当しているかは、謎のままでした。
しかし今回、「意識のエンジン」とも呼べる場所が、視床内部の外側中心核という僅か数ミリの部分に発見されました。
この部位を電気刺激されたサルは、たとえ麻酔によって昏睡状態にあっても意識を取り戻し、ヒトに向けて手をのばすなどの仕草をみせました。
サルの意識は電気刺激が行われている間は続きましたが、電源が落とされると、サルは再び昏睡してしまいました。
意識の場所が特定されたことで、意識障害や昏睡状態(脳死ではない)の治療につながると期待されています。
また今回の発見は究極的に、意識とは何なのか、という大きな謎に迫るキッカケにもなりそうです。
研究結果は米国ウィスコンシン大学のミシェル・J・レディンボー氏らによってまとめられ、1月12日に学術雑誌「Neuron」に掲載されました。
https://www.cell.com/neuron/fulltext/S0896-6273(20)30005-2#%20
脳の各所を電気刺激する
研究者は意識の場所を探すにあたって、ヒトと同じ霊長類であるサルを麻酔で昏睡させました。
そして昏睡状態にあるサルの脳の各所を電気刺激することで、目覚める場所を探しました。
サルの意識の有る無しを評価するにあたっては、サルの脳の神経活動量を測定する他に、覚醒後に基本的な作業タスク(画面に表示された点を目で追うなど)を行わせることで確認します。
結果、視床内部の外側中心核と呼ばれる僅か数ミリの脳組織を、50 Hzの周波数で刺激したときに、サルの意識はもっともよく戻りました。
サルの意識は電気刺激中は継続して確認できましたが、研究者が電源を落とすと、サルは僅か数秒で眠ってしまいました。
このことから研究者は、視床にある僅か3〜4mmほどの外側中心核が「意識のエンジン」となっていると結論づけました。
人間とサルの脳の構造はほとんど同じであることから、人間の意識も同じように小さな外側中心核が担っていると考えられます。
研究チームのレディンボー氏は「今回の研究結果は、チームの誰にとっても、あまり感じの良いものではありませんでした」と述べています。
研究者たちも、意識の出どころがこれほど小さな組織だったことに釈然としないようです。