- アフリカ中部を流れるコンゴ川の下流域では、瀕死か死んだ状態でしか見つからない魚が頻繁に目撃される
- コンゴ下流域は、調査の結果、水深200mを誇る世界最深の川であることが判明し、魚の死因にも関連していた
アフリカ大陸のど真ん中を流れ、大西洋に至るコンゴ川は、長さ4700kmを誇る世界有数の巨大河川です。
10年以上つづく調査により、コンゴ川に不思議な場所が存在することが分かっています。
大西洋にほど近いコンゴ下流域では、川魚の多くが瀕死か死んだ状態でしか発見されません。
この謎を解明する中で、コンゴ下流域は、世界で一番深い川であることが判明しました。しかも、瀕死の原因はこの深さにこそあったのです。
この研究は2019年12月に開催されたアメリカ地球物理学連合の学会で発表されました。
死因は「減圧症」だった?
アメリカ自然史博物館の魚類学専門家メラニー・スティアシー氏と研究チームは、大西洋近くのコンゴ下流域を約322kmにわたり調査しました。
コンゴ下流は、中流域から高度が一気に下がるため、激流ポイントが多いことで知られます。この場所の深さを熟練したカヤック乗りに協力してもらい調べた結果、水深は200mを超えており、世界で最も深い川であることが判明しました。
さらに、下流域では300種以上の魚が発見されていますが、不可思議な点は、瀕死か死骸でしか発見されない魚がいることです。
しかも、この魚たちは、上流や中流に生息する川魚とは違い、独自の進化ルートにあると予測できます。その内の1種の「Lamprologus lethops」(上記画像)は、盲目で色素がなく、洞窟に生息する魚に近似しています。しかし、近くに洞窟はありません。
スティアシー氏は、これについて「コンゴ下流の激流が、水中に障壁を作ることで同地の魚たちを孤立させ、新種を生み出している」と推測します。
また、かろうじて生きている魚を観察すると、皮下やエラで泡が形成される様子が発見されました。これは「減圧症」の兆候を示しています。減圧症とは、減圧に伴い体内にあるガスが、血管内や体組織内に作られて生じる障害です。
これを放っておくと、虚血状態に陥り、死に至ります。
調査データは、コンゴ下流に強い水流サイクルが存在することを示しており、川底から水面に向かって水流が激しく上昇するポイントがあります。
つまり、深部に生息する魚がこの上昇流に飲み込まれると、急激な圧力低下を引き起こし、減圧症にかかるというわけです。
コンゴ下流は、世界最深の川であると同時に、生物にとって過酷な環境なのです。