- 3Dプリント技術の応用により、ダマスカス鋼の構造を再現
- 3Dプリンタレーザーの熱をコントロールすることで、軟質層と硬質層を作り出す
- 作られた新しい合金は、ダマスカス鋼よりも高い機械的特性を持つ
現代において、木目状の模様を特徴とする「ダマスカス鋼」は高級材料として有名です。しかし、古代ダマスカス鋼の作り方は既に失われており、本当のダマスカス鋼を作成できる人はいません。
ところが、ドイツのマックス・プランク研究所(MPIE)のフィリップ・クルシュタイナー博士らの最新の研究では、古代ダマスカス鋼に見られる層状構造を3Dプリンタで再現することに成功。
そのうえ高強度で延性のある新しい合金は、古代ダマスカス鋼の機械的特性を上回っています。
ダマスカス鋼とは
ダマスカス鋼は高い強度と美しい模様から、ナイフや包丁、アクセサリーなどに利用されており、多くの人に愛されている材料です。
もともと、ダマスカス鋼(別称ウーツ鋼)は南インドで紀元前6世紀ごろに開発されました。当時から人気があり世界的に輸出されていましたが、その製法は既に失われています。
そのため、現代に至るまで多くの材料科学者たちが古代ダマスカス鋼の再現しようと試みてきました。しかし、未だに完全再現できていません。
ですから、現在作成・流通している「ダマスカス鋼」は、正確には「古代ダマスカス鋼に似た別物」です。
現代のダマスカス鋼は異種の金属を重ね合わせて鍛造する「積層鋼」と呼ばれるものであり、「古代ダマスカス鋼」に似た模様があります。
積層鋼は「古代ダマスカス鋼」のいわば代用品ですが、現代では「ダマスカス鋼」という名称が定着しているのですね。