3Dプリンタでダマスカス鋼を再現
さて、古代ダマスカス鋼の成分や手法は完全に判明していませんが、その強度と延性は、作成時の「折り曲げと鍛造の繰り返し」からもたらされると考えられています。
折り曲げと鍛造の繰り返しが「軟質層と硬質層のパターン」を作ります。通常、このパターンは手作業の中で自然に生じるものですが、クルシュタイナー氏らはデジタル制御によって再現できると考えたのです。
そのために、彼らは3Dプリント技術を応用しました。
近年、3Dプリントの技術は大きく前進しています。3Dプリントにはいくつかの方式がありますが、その中の1つに「指向性エネルギー堆積」方式があります。これは、噴射ノズルから粉末を供給しつつ、同時にレーザーで熱を加えて溶融結合していく造形方式です。
例えば、金属粉末をレーザーによって1層ずつ堆積させることで、立体的な合金が作れます。
「指向性エネルギー堆積」最中に一時停止するなら対象金属層は冷却されます。また逆にレーザーを照射することで再加熱することも可能です。
彼らは金属の冷却状態をコントロールすることで、熱による硬化領域と非硬化領域を交互に作り出すことに成功。
これにより、ダマスカス鋼に見られる「軟質層と硬質層のパターン」を再現したのです。
研究チームは、この方法によって鉄・ニッケル・チタンをベースとした新しい合金を設計しました。これは1300メガパスカルの引張強度(引っ張りに対する最大強度)と10%の伸び率を持ち、古代ダマスカス鋼よりも優れた機械的特性を示しています。
彼らが作った新しい合金は、正確には「古代のダマスカス鋼」ではありません。しかし、構造的にはダマスカス鋼であり、広義的に「3Dプリンタでダマスカス鋼を再現した」と言えるかもしれませんね。
今回の研究は、3Dプリントの熱処理が合金の構造を局所的に調整できることを示しました。これは今後の製造の可能性を大きく広げるものとなるでしょう。クルシュタイナー氏らは更なる調整とテストを続ける予定です。
この研究は6月24日、「Nature」に掲載されました。
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2409-3#ref-CR11
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