Point
■血管付きの生きた皮膚を3Dプリントで作る方法が開発された
■内皮細胞や周皮細胞などを動物コラーゲンと組み合わせることで、元の皮膚と人工皮膚が接続し、血流が生まれる
■運ばれてくる血液と栄養分により、人工皮膚は剥がれることなく元来の皮膚と一体化する
現在普及している医療用バンドエイドは、傷の修復を促す効果がありますが、決して皮膚と一体化することなく、最終的には剥がれます。これは、人工皮膚に血管が無いためです。
そこで今回、米レンセラー工科大学と米イェール大学の共同チームが、血管付きの生きた皮膚を3Dプリントで作る方法を開発しました。論文は、雑誌「Tissue Engineering Part A」に掲載されています。
https://www.liebertpub.com/doi/10.1089/ten.TEA.2019.0201
血管同士が接続することで元来の皮膚と一体化
研究を率いたレンセラー工科大学のPankaj Karande氏は、数年前に発表した論文の中で、採取した2種類の生きたヒト細胞を用いて「生物学的インク」を作り、それらを皮膚様構造にプリントできることを示しました。
Karande氏らは今回、血管の内部に存在するヒトの内皮細胞や、それを包み込んでいる周皮細胞といった重要な成分を、皮膚によく見られる動物コラーゲンやその他の細胞と組み合わせることにより、細胞同士のコミュニケーションが生まれ、数週間以内に生物学的に有効な血管を形成することを証明しました。
イェール大学の研究チームがこの人工皮膚をマウスに移植したところ、人工皮膚の血管はマウス自身の血管とコミュニケーションを取り、接続するようになりました。人工皮膚は、血管を通して運ばれてくる血液と栄養分のお陰で、剥がれることなく元来の皮膚と一体化して生存を続けたのです。