光合成でどうやってクモ糸を作るの?
クモ糸タンパク質を他の生き物に生産させようとする場合、炭素源(C)に加えて窒素源(N)を含んだ栄養を持続的に供給する必要があります。
また、海に生息する海洋性の紅色光合成細菌は、光合成による二酸化炭素吸収能力に加えて、水中の窒素を取り込んで栄養にする能力がありました。
そこで研究者はジョロウグモの細胞からクモ糸を作る遺伝子を切り出して、紅色光合成細菌に組み込み、光合成能力を生かしてクモ糸を生産してもらうアイディアを思いついたのです。
クモの遺伝子を組み込んだ紅色光合成細菌は、上の図のような培養槽の中で、人工海水・二酸化炭素・窒素を与えられ、LEDの光(730nmの近赤外線)を受けながら生育されました。
結果、紅色光合成細菌は栄養豊富な培地で培養した場合の7.5%に相当するクモ糸タンパク質を生産できました。
また研究者は抽出したタンパク質を有機溶媒に溶かして伸ばすことにより、上の図のようなクモ糸の繊維構造を再現することにも成功しました。
このことから、地球に無尽蔵に存在する二酸化炭素と窒素、そして同じく無尽蔵に降り注ぐ光を使って、クモ糸タンパク質を手軽かつ持続的に生産できる可能性が示唆されました。
もしかしたら未来では、天然シルクは海から取るようになっているかもしれませんね。
研究内容は日本の理化学研究所のChoon Pin Foong氏らによってまとめられ、7月8日に学術雑誌「Communications Biology」に掲載されました。
https://www.nature.com/articles/s42003-020-1099-6
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