自分の人生がハードモードだとアピールする成功者たち
研究の契機となったのは、よく有名人や大企業の経営者たちなどが語る、自分史に対する違和感でした。
成功者として紹介された一定数の人々は、両親が既にリッチであるにもかかわらず、自分の人生が「困難に満ちた不利な状態」からはじまったと語っていたからです。
そこで今回、研究者たちは、この奇妙な事実誤認の正体を調べることにしました。
語られた嘘が、その場しのぎのものではなく、もっと大きな、人間の本質にかかわる問題だと考えたからです。
調査にあたっては大企業の社長や幹部、有名人など175人の「成功者」たちに対して、巧妙に仕組まれたインタビューを行い、自分の歴史を語らせました。
すると175人のうち24人(14%)は、親がリッチであったにもかかわらず、自分の生まれを貧困層や労働者階級だと答えました。これは明らかな嘘です。
また12人(7%)は自分の生まれが恵まれていることは否定しないものの、異常なまでに先祖の苦労を強調し、それを自分の苦労のように語るという、不可解な論理(家族史を自分史にする)を展開しました。
この結果は、少なくない成功者(約5人に1人)が、人生の出発地点をハードモードに偽装していたことを示します。
しかし、なぜ彼らはリッチな環境で育った事実を隠したのでしょうか?