偽装は実力不足を隠すためだった
なぜ一部の成功者たちは、生まれの豊かさを隠すのか?
謎を探るために研究者たちはインタビューの記録を詳しく調べました。
すると、生まれの環境に嘘や誇張を混ぜていた人々は、今の高い地位に昇りつめた要因を「人間としての高い精神性」や「長時間労働」としていることがわかりました。
リッチな両親から受けた英才教育や資金投資を意図的に言わずにおくことで、成功を自身の実力に結びつけようとしていたのです。
話題が親の豊かさや親からうけた支援になると、彼らは自分よりも多くの経済的援助を受けた同僚に会話をむけることで、支援の事実をぼかしました。
さらに彼らは自分と現在の仕事とのかかわりを話すときに、一定の「文法」を用いることがわかりました。
過去の偽装者は、自分は「業界」にとってかつて異分子であり、いわれなき差別を受けて苦しんだが、必死になって努力することで、差別を打ち負かしてついには成功した…という「闘争」の過程を話に組み込んでいたのです。
これらの結果は、過去の偽装を行う人間は、自分の能力を実力以上にみせようとしていることを示します。
若い頃の苦難や生まれの貧しさを偽装するのも、現在の高いの地位とのギャップを際立たせ、他人に対するマウンティング(優位性の誇示)をおこなうためだったのです。