集団競技における位置取りの作戦は定量化できるのか?
集団競技における位置取りの作戦は定量化できるのか? / © Cygames, Inc.
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自転車競技における位置取り作戦の定量化に成功 ~逃げと先行の駆け引き~ (2/2)

2021.05.16 Sunday

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ポイントレースで勝つには、後半に分離する先頭集団に入っておくべき

研究では、競技中の集団と分離の状態を4つに定義しました。

それぞれ、①1つの密集した集団の状態、②伸長した集団の状態、③分離した集団の状態、④逃げ集団が主集団から離れた状態 に分けられます。

自転車競技における集団秩序の定量化

Credit:奥村 文浩ら, European Journal of Sports Science(2021)そしてポイントを獲得できる10周分を4分割しました。

これにより時間経過とともに、競技者の集団が①~④の中でどのような状態になることが多いか割合で数値化できるのです。

また状態の遷移確率も分かります。

ポイントレースにおける状態の定義および遷移図
ポイントレースにおける状態の定義および遷移図 / Credit:奥村 文浩ら, European Journal of Sports Science(2021)

定量化の結果、レースの後半では、前半と比較して状態②から状態③への遷移確率が高いと判明。

さらに状態③を繰り返す確率や、状態④である割合が多いと分かりました。

観察した3つの競技の状態遷移確率 (A) およびスプリント間の10周を4等分した区間での状態遷移確率 (B)
観察した3つの競技の状態遷移確率 (A) およびスプリント間の10周を4等分した区間での状態遷移確率 (B) / Credit:奥村 文浩ら, European Journal of Sports Science(2021)

つまり、レースが後半になるに従って集団が分離する傾向は大きくなり、一度分離した集団の再結合は難しいと言えます。

ポイントを取って勝利するためには、レースが後半になる前に、集団がどこから分離するのか見極めて位置取りしなければなりません

これまで全選手の位置取りが定量化されたことはありませんでした。

今回のユニークな定量化は、奥村氏が報告しているように、自転車競技という「利己的な環境の中で生じる協力的な行動」の検証になりました。

選手たちの今後の戦略にも影響を与えるかもしれませんね。

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