木の幹の上で、茶色と白のしま模様の殻を背負い、長い触角を前にのばしてはうカタツムリ No.0034

ナゾロジー図鑑 ・ 生き物

カタツムリ

Stylommatophora

多くは触角の先に目、殻は体の一部。
雨の日に出てくる、陸の巻貝。

ナゾロジーの記事
21本
日本のカタツムリ
約800種
多くのカタツムリの触角(目は上の2本の先)
4本

カタツムリは、陸にすむ巻貝のうち殻をもつものの呼び名で、イカや二枚貝と同じ軟体動物です。多くは肺で呼吸し、触角の先に目があります。乾燥に弱く、雨の日や夜に活動します。日本には約800種がいて、殻をなくしたなかまがナメクジです。

図鑑データ

分類
軟体動物 › 腹足類(巻貝)› 多くは有肺類の柄眼目(マイマイ目)。1つの分類群の名前ではない
学名
Stylommatophora(柄眼目。カタツムリの多くが入るグループの名前)
英名
snail(スネイル)。陸の種だけを指すときは land snail
漢字
蝸牛(かぎゅう)
別名
マイマイ、デンデンムシ
種の数
陸にすむ巻貝(ナメクジをふくむ)は世界で2万4000〜3万5000種ほど。日本のカタツムリは約800種
大きさ
殻の幅0.6mmほどの種から、殻が20cm以上になる種まで
体のつくり
多く(柄眼類)は頭に大小2対の触角があり、上の長い触角の先に目。口に歯舌。多くは肺で呼吸する
すみか
南極と一部の島をのぞく世界中の陸地。しめった森や草むら、石灰岩の土地に多い
食べもの
多くは生きた葉やかれ葉、きのこ、藻類など。肉食の種もいる
増え方
多くは雌雄同体。交尾して土の中などに卵を産み、子は殻をもった姿で生まれる
寿命
多くの種は1年ほど。大型の種では野外で10年以上生きるものもいる

カタツムリとは(何類? 何の仲間?)

カタツムリは、陸にすむ巻貝のうち、殻をもつものをまとめた呼び名です。巻貝は「腹足類(ふくそくるい)」というグループで、二枚貝やイカと同じ軟体動物のなかまです。昆虫や爬虫類のなかまではありません。

「カタツムリ」は毎日の暮らしの言葉で、生き物の分類の決まった1つのグループを指す名前ではありません。巻貝が海から陸に上がる進化は、何度も別々に起きました。そのため陸の巻貝には、殻の入り口にふたをもつヤマタニシのなかまなど、系統のちがうものがまじっています。ふつう「カタツムリ」と呼ばれるのは、ふたをもたず、肺で空気を吸って呼吸する「有肺類(ゆうはいるい)」のなかまで、その多くが「柄眼目(へいがんもく)」というグループに入ります。日本では、ナンバンマイマイ科のなかまが代表的なカタツムリです。

陸にすむ巻貝(ナメクジもふくむ)は、世界で2万4000〜3万5000種ほどが知られています(資料によって数がちがいます)。日本にいるカタツムリは約800種です。

英語では snail(スネイル)と呼ばれます。ただし英語の snail は、海や川の巻貝もふくむ広い呼び名で、陸の種だけを指すときは land snail(ランドスネイル)といいます。

木の幹の上で、茶色と白のしま模様の殻を背負い、長い触角を前にのばしてはうカタツムリ
木の上をはうミスジマイマイ写真: Takahashi(Public domain) / Wikimedia Commons

ナメクジとのちがい(殻をとるとナメクジになる?)

ナメクジは、陸にすむ巻貝のうち、殻が小さくなったり、なくなったりしたものをまとめた呼び名です。体のつくりはカタツムリとほとんど同じで、多くのナメクジは、カタツムリと同じ柄眼目に入ります。いわば「殻をなくしたカタツムリ」です。

殻をなくす進化は、別々の系統のカタツムリで何度も起きました。これを「ナメクジ化」ともいいます。そのためナメクジは、1つのまとまったグループではありません。多くのナメクジは、体の中に小さな殻のなごりを残しています。殻のない体は、木の皮のすき間や石の下など、カタツムリが入れないせまい場所にもぐりこめるのが利点です。

カタツムリの殻は体の一部で、中には内臓が入っています。そのため、カタツムリの殻をとってもナメクジにはならず、殻が大きくこわれたり、無理にとったりすると死んでしまいます。

日本の家のまわりでよく見られるのは、ナメクジ(ナメクジ科)や、1970年代ごろから見られるようになったヨーロッパ原産の外来種チャコウラナメクジなどです。山には、体長10cm以上になるヤマナメクジもいます。

赤茶色の丸い棒の上を、体をのばしてはう、うす茶色の細長いナメクジ
チャコウラナメクジ写真: PD files(Public domain) / Wikimedia Commons

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大きさと体のつくり(目はどこ? 歯や脳はある?)

カタツムリの大きさは、種によって大きくちがいます。東南アジアで見つかり、2022年に新種として報告されたアングストピラ・プサミオン(Angustopila psammion)は、殻の幅が0.6〜0.68mmしかなく、発表の時点で、陸のカタツムリの最小記録になりました。大きなものでは、アフリカなどに、メノウアフリカマイマイのように殻が20cm以上、のびたときの体長が40cm近くになる種がいます。記録では、1978年に測られたアフリカの Achatina achatina の個体が、殻の長さ27.3cm、のばした体長39.3cm、体重900gでした。日本の在来種では、四国のアワマイマイが特に大きく、殻の直径は60mmをこえます。

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  • 触角と目:カタツムリの多く(柄眼類)は、頭に大小2対、合わせて4本の触角があります。目があるのは、上の長い触角(大触角)の先です。下の短い触角は、においを感じる役目をしています。どちらの触角も、のび縮みして、中に引っこめることができます。ヤマタニシなどのなかまは触角が1対だけで、目はその根元にあります。
  • 口と歯(歯舌):口の中の上側には、かたい「顎板(がくばん)」があり、下側には「歯舌(しぜつ)」があります。歯舌は、小さな歯がびっしり並んだリボンのような器官で、おろし金のように食べものをけずりとります。多くの巻貝の歯舌には、何千もの小さな歯が並んでいます。歯は一生のあいだ奥で作られ続け、前へと送り出されていきます。
  • 脳:頭には、神経が集まった「脳神経節」があり、ほかの神経節とつながって体の働きを調節しています。哺乳類や鳥の脳よりずっと単純ですが、カタツムリは、2つのことを結びつけて覚える「連合学習」ができます。
  • 肺と呼吸:カタツムリの多くは、肺で空気を吸って呼吸します。体の横には、呼吸のための穴(呼吸孔)があいています。肺で呼吸するため、水の中ではおぼれてしまいます。
  • 足と粘液:おなか側は、筋肉でできた「足」です。足の裏に波のような筋肉の動きを次々に伝えて、粘液の上をすべるように進みます。速さは、ヨーロッパの Helix lucorum の大人で、ふつう秒速1mmほどです。粘液は、体がかわくのを防ぐほか、カミソリの刃のようなとがったものの上でも、体を傷つけずに進めるようにしています。
小さなとげのような歯が何列もびっしり並んだ様子を写した5段の電子顕微鏡写真。一部の歯は黄色で色づけされている
歯舌(しぜつ)の電子顕微鏡写真写真: Pholyotha A, Sutcharit C, Tongkerd P, Panha S (ZooKeys 976)(CC BY 4.0) / Wikimedia Commons

なぜ殻があるの?(殻のつくりと巻き方)

殻は、体の一部です。動いているときも、肺や心臓、腎臓、腸などの内臓は殻の中にあり、外に出ているのは頭と足だけです。殻はおもに炭酸カルシウムでできていて、殻の入り口のふちに材料を足しながら、らせん状に大きくなります。そのため殻のうずの中心は子どものころに、外側は大きくなってから作られた部分です。殻は、休むときに体を引っこめて、乾燥や天敵から身を守るのに使われます。

殻の巻き方には、右巻きと左巻きがあり、多くのカタツムリは右巻きです。日本のカタツムリでは、種ごとに巻き方が遺伝で決まっていて、ヒダリマキマイマイなど少数の種が左巻きです。巻き方が逆の個体どうしは交尾がむずかしくなるため、巻き方が逆になったことで、新しい種が生まれる場合があると考えられています。

赤い文字が書かれた緑がかった壁の上の、茶色の殻のカタツムリと、そのまわりの白いまだら模様
ヒダリマキマイマイと、食べたあと写真: Commons user (PD-self)(Public domain) / Wikimedia Commons

殻の表面は、「殻皮(かくひ)」といううすい膜でおおわれています。殻皮には細かいでこぼこがあり、ついた汚れを雨で洗い流しやすくしていると考えられています。この構造をヒントにして、汚れのつきにくい建物の外壁が作られています。

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どこにいる? なぜ雨の日に出てくる?

カタツムリやナメクジは、南極と一部の島をのぞく世界中の陸地にすみ、砂漠からツンドラ、熱帯雨林まで、いろいろな環境で見られます。多くの種は乾燥に弱く、しめり気のある森や草むら、石や落ち葉の下などに多くすんでいます。

カタツムリが雨の日や夜に多く見られるのは、体の水分をうしないやすいからです。動くときに出す粘液は、ほとんどが水でできています。しめった夜の空気や雨は、水分の蒸発をおさえてくれるのです。乾いた日中など条件の悪いときは、石の下などのかくれ場所で、殻の中に体を引っこめてじっとしています。

雨のあと、ブロック塀やコンクリートの壁にカタツムリがたくさん集まっていることがあります。これは、殻の材料になるカルシウムを、コンクリートから食べとるために集まっていると考えられています。

日本のカタツムリ

カタツムリは移動する力が小さく、山や乾いた土地、川や海をこえて広がるのがむずかしい生き物です。そのため、地域ごとに別の種に分かれやすくなっています。日本で広くすんでいるのは、畑や家のまわりでも見られるウスカワマイマイや、外来種のオナジマイマイなど、ごく一部の種だけです。そのほかのカタツムリは地域ごとに種がちがい、関東と関西でも多くの種が入れかわります。

南西諸島や小笠原諸島では、島ごとに固有種が進化していることが多く、沖縄にすむ約140種のカタツムリは、そのほとんどが島ごとの固有種です。殻の材料になるカルシウムが多い石灰岩の土地は、カタツムリにとってすみやすく、種類も数も多くなります。

コケの生えた木の幹を、触角をのばして上へのぼる、黄色っぽい殻のカタツムリ
木の幹をのぼるカタツムリ写真: Carbonium(CC BY 3.0) / Wikimedia Commons

カタツムリは、ほかの小さな生き物の「乗り物」になることもあります。2022年に発表された実験では、ヨーロッパのカタツムリ Cepaea nemoralis が、クマムシを体にのせて短い距離を運べることが示されました。ただし、乾燥して休眠しているクマムシにとって、カタツムリの粘液は死ぬ割合を高めることもわかりました。

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冬眠と夏眠(何日食べなくても大丈夫?)

冬の寒いときや、夏の暑く乾いたときには、カタツムリは物かげにかくれ、殻の中に体を引っこめて休みます(冬眠・夏眠)。このとき殻の入り口には、粘液の膜をはります。この膜は「エピフラム」と呼ばれ、かわくとセロファンや障子紙のような膜になって、体を乾燥から守ります。膜には小さな穴があいていて、息がつまらないようになっています。

古い木の板の上に置かれた、殻の入り口の形をした白くて平たい膜
殻の入り口をふさぐ膜(エピフラム)写真: Aung(Public domain) / Wikimedia Commons

休眠したカタツムリは、何も食べずに長いあいだ生きのびることがあります。エジプトなどの砂漠にすむ Eremina desertorum というカタツムリは、1846年3月に死んだと思われて、大英博物館で標本の台紙にはりつけられました。ところが1850年3月、まだ生きていることがわかりました。1904年にブリキの箱に入れられた40匹のうち、約8年後の1912年に10匹が生きていたという記録もあります。

2026年に公開された研究(査読前の論文)では、休眠中のカタツムリの血液から、休眠を引き起こす物質を見つけて人工的に合成し、「SNAP」と名づけました。SNAPはカタツムリを休眠させ、マウスの心臓では、血流が止まってから再開したときの傷みをやわらげる働きが見られたといいます。

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何を食べる?

多くのカタツムリは、植物を食べます。生きた葉や茎、やわらかい樹皮、果物や野菜のほか、かれ葉など分解が進んだ植物、きのこなどの菌類、藻類も食べます。建物の壁やガードレールの表面に生えた藻類を食べたあとも、身近で見ることができます。

多くの種は、植物の繊維(セルロース)を分解して吸収できます。そのため新聞紙などの紙もよく食べ、紙を食べたときは、フンが紙と同じ色になります。飼うときには、キュウリやニンジンなどの野菜をあたえます。

カタツムリは、殻を作り、保つために、たくさんのカルシウムを必要とします。すてられた貝殻や、ほかのカタツムリの死んだ殻をなめたり、コンクリートをかじったりして、カルシウムをとります。

農作物や庭の植物を食べるウスカワマイマイなどは、農業の害虫として、殺虫剤で防除されることもあります。

ほかのカタツムリやミミズを食べる、肉食の種もいます。ニュージーランドにすむパウエリファンタ(Powelliphanta)のなかまには、世界でも特に大きな肉食のカタツムリがふくまれます。

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カタツムリは共食いする?

カタツムリやナメクジには、なかまを食べることがあるものもいます。アフリカマイマイは、まれに共食いをすることがあるとされます。肉食のナメクジの多くは、ときどき同じ種の死がいも食べます。また肉食のカタツムリには、ほかの種のカタツムリをおそって食べるものがいます。

天敵と身の守り方(寄生虫は危ない?)

カタツムリには、とても多くの天敵がいます。鳥はおもな天敵の一つで、ヨーロッパのウタツグミは、カタツムリを石などにたたきつけて殻を割り、中身を食べます。ハリネズミ、タヌキ、イノシシなどの哺乳類や、トカゲ、カエルもカタツムリを食べ、カエルの中には、殻ごと丸のみにする種もいます。

カタツムリを専門に食べる動物もいます。日本では、オサムシのなかまのマイマイカブリや、ホタルのなかまの幼虫がよく知られています。ヨーロッパには、おもにカタツムリを食べるザトウムシのなかまもいます。陸にすむ扁形動物(プラナリアのなかま)のコウガイビルも、カタツムリやナメクジの天敵です。

右巻きをねらうヘビ、左巻きで生きのびるカタツムリ

石垣島や西表島にすむイワサキセダカヘビは、カタツムリを専門に食べるヘビです。あごを器用に使って、殻から中身だけを引き出して食べます。2007年に発表された研究では、このヘビのなかまで、カタツムリを食べる種の下あごの歯は、右側のほうが左側より多いことがわかりました。世界のカタツムリは右巻きが圧倒的に多いため、右巻きの殻から中身を引き出しやすい形に進化したと考えられます。実験では、イワサキセダカヘビは、右巻きのカタツムリのほうが速く中身を引き出せて、左巻きのカタツムリはつかみそこねて落とすことが多くありました。

2010年に発表された研究では、左巻きのサツマ属のカタツムリが、このヘビにおそわれても生きのびることが実験で示されました。世界の分布を調べると、セダカヘビのなかまがすむ地域では、巻き方が逆になることで新しい種が生まれることが、ほかの地域より多く起きていました。

殻をふり回して戦うカタツムリ

天敵におそわれると、多くのカタツムリは殻の中にじっと引っこんで身を守ります。ところが、エゾマイマイなど足の筋肉が発達した一部の種は、エゾマイマイカブリやオオルリオサムシなどにおそわれると、殻をふり回して撃退することがわかっています。2016年に発表された研究では、北東アジアにすむカタツムリのなかま(Karaftohelix)で、殻にこもる「受け身の守り」と、殻をふり回す「攻めの守り」の2通りが、島と大陸で別々に進化したことが示されました。

カタツムリの寄生虫は危ない?

カタツムリやナメクジは、人にも感染する寄生虫の「中間宿主(ちゅうかんしゅくしゅ)」になることがあります。とくに注意が必要なのが、広東住血線虫(かんとんじゅうけつせんちゅう)です。この線虫はネズミの体内でおとなになります。ネズミの体から出された幼虫をナメクジやカタツムリが食べると、幼虫はその体の中で成長します。人の体に入ると、幼虫は脳などの中枢神経に入りこみ、好酸球性髄膜脳炎などを起こすことがあります。日本でも、2000年に沖縄県で亡くなった人がいます。

野生のカタツムリやナメクジを生や加熱が不十分なまま食べたり、さわった手を口や目に入れたりしないことが大切です。さわったあとは、石けんで手をよく洗いましょう。

カタツムリの体を利用する、ふしぎな寄生虫もいます。ロイコクロリディウムという吸虫は、カタツムリの触角の中に入りこみ、イモムシのように脈打たせます。これを鳥がイモムシとまちがえて食べると、鳥の体内でおとなになります。卵は鳥のフンといっしょに外に出て、そのフンをカタツムリが食べることで、また感染します。

緑の葉の上の、黄色い半透明の殻のカタツムリ。片方の触角が太くふくらみ、緑と白のしま模様になっている
ロイコクロリディウムに寄生されたカタツムリ写真: Thomas Hahmann(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

増え方と寿命(卵はどこから生まれる?)

カタツムリ(有肺類)の多くは、1匹がオスとメスの両方の生殖器をもつ「雌雄同体(しゆうどうたい)」です。ふつうは2匹が出会うと交尾して、おたがいに精子をわたし合います。1匹だけで受精できる種もありますが、産む卵の数や、卵がかえる割合は、大きく下がることが多いとされます。なお、ヤマタニシなど殻にふたをもつなかまは、オスとメスが分かれています。

生殖器の出入り口(生殖孔)は、頭の横の、触角の後ろにあります(右巻きの種では右側)。リンゴマイマイ科やナンバンマイマイ科など一部のなかまは、交尾のとき「恋矢(れんし)」という石灰質の槍のようなものを、相手の体につきさします。Bradybaena pellucida というカタツムリを使った2015年の実験では、恋矢でさされた個体は寿命が短くなり、一生に産む卵の数も減りました。

緑の葉の上で、茶色のしま模様の殻をもつ2匹のカタツムリが、頭の横をくっつけ合っている
交尾するカタツムリ写真: Linda Tanner(CC BY 2.0) / Wikimedia Commons

卵は、多くが炭酸カルシウムの殻におおわれた球形で、土の浅いところや朽ち木の下、木の根元のすき間などに、まとめて産みつけられます。庭でよく見られるカタツムリ(英語で garden snail と呼ばれるもの)は、あたたかくしめった時期に、足で土を掘って5〜10cmの深さに卵を埋めます。1回に産む卵の数は種によってちがい、アフリカマイマイでは100〜1000個以上になります。

卵は多くの場合、1週間から1か月ほどでかえります。水中の巻貝によく見られる幼生の時期は卵の中ですごすので、生まれた子どもは、小さいながらもすでに殻をもった、カタツムリの姿をしています。大人になるまでの期間は、6週間から5年と、種によってさまざまです。大人の大きさになると、殻の入り口に厚いふちを作ることがあり、そこで成長が止まって繁殖を始めます。

茶色い土の穴の奥にかたまっている、白くて丸い真珠のような卵
土の中に産みつけられた卵写真: חי(CC BY-SA 3.0) / Wikimedia Commons

寿命も、種によって大きくちがいます。多くの種は1年ほどで、2〜3年生きる種もいます。日本の大型のマイマイ類は数年、殻のうすい小型のウスカワマイマイは、ふつう1年ほどと考えられています。大型の種には野外で10年以上生きるものもいて、エスカルゴとして食べられる Helix pomatia は、飼育下で25年まで生きた例があります。日本では、キセルガイのなかまのナミコギセルを15年間飼育した記録もあります。

数が減っている? 絶滅と外来種

陸の貝のなかまは、いま、とくに絶滅の心配が大きい生き物の一つです。記録に残る絶滅した種の数は、陸の貝のなかまが、ほかのどの生き物のグループよりも多いとされています。生息地の破壊や汚染によって、近年、かなりの数の種が絶滅しました。

人が持ちこんだ生き物が原因になることもあります。太平洋の島々では、外来種のアフリカマイマイを減らそうと、肉食のカタツムリのヤマヒタチオビ(Euglandina rosea)が持ちこまれました。しかしヤマヒタチオビはアフリカマイマイを減らすのにはあまり役立たず、島にしかいない固有のカタツムリを食べて、ハワイやタヒチではかなりの数の種が絶滅しました。小笠原諸島では、外来の陸生プラナリアのニューギニアヤリガタリクウズムシが、固有のカタツムリをつぎつぎに食べて、大きな被害が出ています。

タヒチでは、白い殻をもつ Partula hyalina が、ヤマヒタチオビのいる島で生き残っています。2021年に発表された研究では、2.2×4.8×2.4mmの小さな太陽光センサーを作って調べ、このカタツムリが森のふちにすみ、天敵のヤマヒタチオビよりずっと多くの日光を浴びていることを確かめました。日当たりのよい場所が、天敵から逃れる「日なたの避難所」になっていると考えられています。

白い台の上の、細長い赤茶色の殻をもつカタツムリを横から見たところ
肉食のカタツムリ、ヤマヒタチオビ写真: Donald Hobern from Copenhagen, Denmark(CC BY 2.0) / Wikimedia Commons

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アフリカマイマイ(外来種の大型カタツムリ)

アフリカマイマイは、東アフリカ原産の大型のカタツムリで、殻の高さは20cm近くになります。おもに人に運ばれて分布を広げ、いまでは熱帯のほとんどの地域に広がっていて、「世界の侵略的外来種ワースト100」にも選ばれています。夜行性で、一晩に50m以上も移動することがあります。

沖縄本島では、台湾を経て持ちこまれて飼われていたものが、沖縄戦をきっかけに野外へ逃げ出して広がりました。奄美大島には食用として、小笠原諸島にはジャワ島から持ちこまれました。いまは奄美大島や沖縄本島などの南西諸島と、小笠原諸島にすんでいます。農作物を食べる害虫で、広東住血線虫の中間宿主にもなります。植物防疫法で、すんでいる島からの持ち出しや、本土への持ちこみが禁止されています。

夜の石だたみの上を、長い触角をのばしてはう、黄色と茶色のしま模様の大きな殻のカタツムリ
アフリカマイマイ写真: Brendan(CC0) / Wikimedia Commons

名前の由来と人とのかかわり

漢字では「蝸牛(かぎゅう)」と書きます。日本語には、カタツムリのほかにマイマイ、デンデンムシなどの呼び名もあります。それぞれの語源には、いくつかの説があります。

  • カタツムリ:「笠つぶり」「潟つぶり」「片角振り」などの説があります。「つぶり」は、巻貝を表す古い言葉「つび」からきています。
  • デンデンムシ:子どもたちが、殻から「出ろ、出ろ」とはやし立てた「出ん出ん虫」からきた、という説があります。
  • マイマイ:子どもたちが「舞え、舞え」とはやし立てたことからきた、という説があります。
  • 蝸牛:動き方や、頭の角(触角)がウシを思わせるため、という説があります。

民俗学者の柳田國男は、各地のカタツムリの呼び名(マイマイ、デデムシ、カタツムリ、ツブリ、ナメクジなど)がどこで使われているかを調べ、『蝸牛考』を書きました。そして、昔の都(京都)の言葉が、時代ごとに地方へ同心円のように広がって方言ができたとする「方言周圏論」をとなえました。

唱歌「かたつむり」は、1911年(明治44年)に「尋常小学唱歌」で発表された歌で、作詞・作曲者はわかっていません。この歌が国の教科書にのってから、「カタツムリ」という呼び名が全国に定着したとされます。歌詞の「ツノ出せヤリ出せ」の「ヤリ」は、交尾のときに出る生殖器や恋矢のことだという説もあります。

食べものとしてのカタツムリ(エスカルゴ)

カタツムリは、世界の多くの地域で、何千年も前から食べられてきました。2023年に発表された研究では、ボーダー洞窟(Border Cave)で、約17万〜7万年前に人が大型のカタツムリを調理して食べていた証拠が報告されています。

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フランス料理のエスカルゴには、リンゴマイマイ科のカタツムリなどが使われ、食用に養殖もされています。缶詰のエスカルゴには、アフリカマイマイを使ったものも多くあります。日本でも、飛騨地方でクチベニマイマイが子どものおやつとして焼いて食べられていたように、ごく一部の地域で食べる習慣がありました。ただしカタツムリは寄生虫をもっていることがあるので、生や、火が十分に通っていないものを食べるのは危険です。

カタツムリをヒントにした技術

カタツムリの体のしくみは、新しい技術のヒントにもなっています。2019年には、殻の入り口をふさぐエピフラムのしくみをまねて、ぬれるとやわらかくなり、かわくと強くくっつく、何度もはがせる接着剤が報告されました。2024年には、カタツムリの動き方と、くっつく力をまねたロボットの群れも発表されています。カタツムリの粘液は、スキンケア用の化粧品にも使われています。

よくある疑問

カタツムリは何類? 何科・何目の仲間?
カタツムリは、巻貝(腹足類)のなかまで、二枚貝やイカと同じ軟体動物です。昆虫や爬虫類ではありません。「カタツムリ」は1つの科や目の名前ではなく、陸にすむ、殻をもった巻貝をまとめた呼び名です。多くは肺で呼吸する有肺類の柄眼目(マイマイ目)に入り、日本ではナンバンマイマイ科のなかまが代表的です。
カタツムリとナメクジの違いは? 殻をとるとナメクジになる?
ナメクジは、殻が小さくなったり、なくなったりした陸の巻貝の呼び名で、多くはカタツムリと同じ柄眼目に入ります。殻をなくす進化は、別々の系統で何度も起きました。カタツムリの殻は内臓が入った体の一部なので、殻をとってもナメクジにはならず、死んでしまいます。
カタツムリの目はどこ? 歯はあるの?
カタツムリの多く(柄眼類)では、目は、頭にある大小2対の触角のうち、上の長い触角の先にあります。口の中には「歯舌(しぜつ)」という、小さな歯がびっしり並んだリボンのような器官があり、多くの巻貝では、歯の数は何千にもなります。これを使い、おろし金のように食べものをけずりとって食べます。
カタツムリは何を食べる? トマトなどの野菜も食べる?
多くは植物を食べ、生きた葉や茎、果物や野菜、かれ葉、きのこ、藻類などを食べます。紙を食べることもあり、殻の材料になるカルシウムをとるため、コンクリートをかじることもあります。飼うときは、キュウリやニンジンなどの野菜をあたえます。ほかのカタツムリなどを食べる肉食の種もいます。
カタツムリはなぜ雨の日に出てくるの? 晴れの日はどこにいる?
体の水分をうしないやすいため、しめり気の多い雨の日や夜に活動します。動くときに出す粘液も、ほとんどが水です。乾いた日中など条件の悪いときは、石の下などのかくれ場所で殻に引っこんでいます。暑く乾いた時期や冬には、殻の入り口に「エピフラム」という膜をはって休みます。
カタツムリの寿命は? 何年生きる?
種によって大きくちがいます。多くの種は1年ほどで、2〜3年生きる種もいます。日本の大型のマイマイ類は数年、ウスカワマイマイはふつう1年ほどと考えられています。大型の種には野外で10年以上生きるものもいて、Helix pomatia では、飼育下で25年まで生きた例があります。
カタツムリやナメクジに塩をかけると溶けるの?
とけるのではありません。ナメクジに塩をかけると、浸透圧によって体の水分が外にうばわれ、体が小さく縮みます。塩が多いと死んでしまいます。カタツムリも、体に塩がつくと同じように水分をうばわれます。なお、小笠原諸島にしかいないオトメカタマイマイなどの祖先は、流木に乗って海をわたってきたと考えられています。
カタツムリの寄生虫は危ない? さわっても大丈夫?
カタツムリやナメクジは、広東住血線虫という寄生虫をもっていることがあります。人に感染すると、好酸球性髄膜脳炎などを起こし、亡くなることもあります。生で食べたり、さわった手で口や目にふれたりしないようにし、さわったあとは石けんで手をよく洗いましょう。

ナゾロジーで読む21本

  1. 01 カタツムリの殻が「右巻きか左巻きか」を決める遺伝子を発見
  2. 02 カタツムリの血から冬眠誘発物質を抽出して人工合成することに成功
  3. 03 首から卵を産む「幻のカタツムリ」の撮影に初成功!
  4. 04 人類は17万年前からカタツムリを調理して食べていた!?
  5. 05 9900万年前の琥珀から「毛がフサフサ」の新種カタツムリを発見!

近いなかまの図鑑

同じ貝・カタツムリのなかま

参考文献

  1. Páll-Gergely B ほか (2022) The world’s tiniest land snails from Laos and Vietnam (Gastropoda, Pulmonata, Hypselostomatidae). Contributions to Zoology
  2. Hoso M, Asami T, Hori M (2007) Right-handed snakes: convergent evolution of asymmetry for functional specialization. Biology Letters
  3. Hoso M ほか (2010) A speciation gene for left–right reversal in snails results in anti-predator adaptation. Nature Communications
  4. Morii Y, Prozorova L, Chiba S (2016) Parallel evolution of passive and active defence in land snails. Scientific Reports
  5. Bick C ほか (2021) Millimeter-sized smart sensors reveal that a solar refuge protects tree snail Partula hyalina from extirpation. Communications Biology
  6. Książkiewicz Z, Roszkowska M (2022) Experimental evidence for snails dispersing tardigrades based on Milnesium inceptum and Cepaea nemoralis species. Scientific Reports
  7. Piao J ほか (2026) An inducer of snail hibernation causes quiescence and hibernation-like cardioprotection, through metabolic rewiring and autophagy, in mice hearts. bioRxiv(査読前の論文)
  8. Lydeard C ほか (2004) The Global Decline of Nonmarine Mollusks. BioScience
  9. Wojcieszak M ほか (2023) Evidence for large land snail cooking and consumption at Border Cave c. 170–70 ka ago. Implications for the evolution of human diet and social behaviour. Quaternary Science Reviews
  10. Cho H ほか (2019) Intrinsically reversible superglues via shape adaptation inspired by snail epiphragm. Proceedings of the National Academy of Sciences
  11. Zhao D ほか (2024) Snail-inspired robotic swarms: a hybrid connector drives collective adaptation in unstructured outdoor environments. Nature Communications
  12. 沖縄県立博物館・美術館 (2023) こどもフェスタ2023「カタツムリのふしぎにせまってみよう!」配布資料
  13. Wikipedia「カタツムリ」(日本語版)
  14. Wikipedia「Land snail」(英語版)
  15. Wikipedia「Snail」(英語版)
  16. Wikipedia「Terrestrial mollusc」(英語版)
  17. Wikipedia「Gastropoda」(英語版)
  18. Wikipedia「ナメクジ」(日本語版)
  19. Wikipedia「Slug」(英語版)
  20. Wikipedia「歯舌」(日本語版)
  21. Wikipedia「Radula」(英語版)
  22. Wikipedia「Eremina desertorum」(英語版)
  23. Wikipedia「アフリカマイマイ」(日本語版)
  24. Wikipedia「広東住血線虫症」(日本語版)
  25. Wikipedia「ロイコクロリディウム」(日本語版)
  26. Wikipedia「ミスジマイマイ」(日本語版)
  27. Wikipedia「チャコウラナメクジ」(日本語版)
  28. Wikidata「カタツムリ(snail)」(Q308841)

表紙の写真: Takahashi(Public domain) / Wikimedia Commons
ほかの写真のクレジットは、それぞれの写真のページにあります。
この図鑑は、参考文献の資料をもとに、ナゾロジー編集部がまとめています。