2種ともに最少記録を更新!
新種は、ベトナムとラオスへの2回の遠征で採取した堆積物サンプルから発見されました。
東南アジアの石灰岩の地質は、多種多様なカタツムリの暮らしを支えており、研究チームはそこに未発見の種が存在するのではないかと考えたのです。
予想通り、堆積物を水に落とし、浮遊物をすくい上げてみると、既知種にはない非常に小さなカタツムリの殻が確認されました。
ベトナム北部の洞窟の壁面で採取した堆積物からは、直径0.6mmの殻が大量に見つかっています。
これは陸生のカタツムリとして最小記録を更新し、新たに「アングストピラ・プサミオン(Angustopila psammion)」として記載されました。
種小名の「Psammion」は、古代ギリシャ語で「砂粒」を意味します。
下の画像では研究者がボールペンの先端と比較しています。このカタツムリがどれだけ小さいかが実感できます。
一方、ラオス北部の石灰岩の渓谷の堆積物から見つかった新種は、これよりわずかに大きいものの、2番目に小さい陸生カタツムリとして記録されました。
学名は「アングストピラ・コプロロゴス(Angustopila coprologos)」と命名されています。
種小名の「Coprologos」は、古代ギリシア語で「糞を集める者」を意味します。
というのも本種の殻の表面が、ビーズ状の糞に覆われていたからです。
どの殻にも同じ傾向が見られたため、彼らは故意に糞を集めて、殻につけていると考えられます。
確かな理由はわかりませんが、チームは「糞中の化学物質を通して、仲間とコミュニケーションを取るためではないか」と推測。
また、「湿った糞が乾燥から守ってくれるのかもしれない」と指摘します。
これまでの世界最小の陸産カタツムリの記録保持者は、2015年にボルネオ島で発見された「アクメラ・ナナ(Acmella nana)」という種でしたが、殻の平均サイズはA. プサミオンより約20%も大きいです。
同チームの一人で、ベルン自然史博物館(NHMB・スイス)のエイドリアン・ヨッフム(Adrienne Jochum)氏は「今回の発見にはとても驚かされ、これほどの小ささは想像すらしていませんでした」と話します。
その一方で、2種のカタツムリは殻しか見つかっておらず、生きた個体は堆積物のより深い場所に生息しているようです。
詳しい生態もまだ不明ですが、おそらく微生物やデトリタス(微生物の死骸)、菌類のかけらなどを食べていると予想されます。
これほど小さなサイズは、堆積物や岩の隙間、根の表面に隠れて、捕食者から逃れるのに役立っているはずです。
チームは、新種のカタツムリについて、何を食べ、どのように繁殖しているのか、もっと詳しく知りたいと考えています。
彼らの食のネットワークを紐解いていけば、もしかしたら、まだ見ぬミクロ生物が見つかるかもしれません。