量子超越性をめぐる競争とZuchongzhi 3.0の狙い

量子コンピューターの性能が世界的に注目されるようになった大きなきっかけは、先述のGoogleによる“量子超越性”の主張でした。
スーパーコンピューターでのシミュレーションが極めて難しいとされるランダムサーキットサンプリングを高速にこなし、量子計算ならではの実力を世に示したのです。
この成果を機に、各国の研究グループはもっと大規模・高精度な回路やゲート操作に挑むことで、量子コンピューターが古典コンピューターをどこまで上回れるのかを探り始めました。
一方、中国のZuchongzhiシリーズも、超伝導量子プロセッサとしてGoogleのSycamoreに匹敵する存在感を放ってきました。
鍵となるのは、より多くの量子ビットを詰め込みつつ、操作や測定の誤差をいかに抑えるかという点です。
Googleは67量子ビットや70量子ビットの実験で先行していましたが、中国のZuchongzhiも量子ビット数を伸ばしつつ忠実度を高め、最先端レースに食らいついてきました。
そうした競合のなか、Zuchongzhi 3.0は一挙に105量子ビットという大規模化を実現すると同時に、単一ビットや二量子ビットのゲート操作、測定の正確性を大幅に向上させることに成功。
大規模かつ正確に量子回路を運用できる基盤が整ったことで、これまで扱いが難しかった複雑な問題に挑戦する余地が大きく広がったのです。
そこで研究者たちは、古典コンピューターとの性能格差を改めて検証しようと考えました。