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Credit:Ginestra Bianconi . Physical Review D (2025)
quantum

「重力がエントロピー起源」であることを示す革命的理論が発表

2025.03.10 17:00:04 Monday

「そもそも重力って、なぜあるんだろう?」――そんな疑問を抱いたことはありませんか。

リンゴが木から落ちる瞬間を見てニュートンが“万有引力”を思いついたように、私たちの身の回りには重力が常に働いています。

しかし、ブラックホールの熱的な性質や量子情報理論との関わりが指摘されるにつれ、「引き寄せる力」という単純なイメージを超えた奥深い仕組みがあるかもしれないと考えられてきました。

今回イギリスのロンドン大学(University of London)で行われた研究によって、重力がエントロピー起源であるとする革命的な理論が提唱されました。

エントロピーは私たちの身近な例でいうと、コーヒーをかき混ぜているうちにミルクと混ざり合って元の状態には戻りにくくなる、あの“乱雑さ”や“不可逆”の度合いに似た概念です。

このエントロピーが、なんと重力の根源と結びつく可能性があるというのです。

論文著者のビアンコに氏は「この研究は、量子重力がエントロピー起源であることを提唱し、重力場が暗黒物質の候補となる可能性を示唆しています」と述べています。

さらに研究者たちは「時空の曲がり具合」を表す計量(メトリック)と、「物質自体が持つ曲がり」を表す別の計量を用意し、両者の量子相対エントロピーこそが重力を生むと提案しました。

これは単に重い物体があれば時空が歪んで重力が生まれるとする、時空一辺倒な既存の解釈の仕方とは大きく異なり、重力も時空と物質の相対的な関係性(量子相対エントロピー)によって決まる可能性を示しています。

研究内容の詳細は2025年3月3日に『Physical Review D』にて発表されました。

Gravity from entropy https://doi.org/10.1103/PhysRevD.111.066001?_gl=1*1v36lxu*_ga*NDc0MDg5NTkwLjE3MjAzOTI3NTM.*_ga_ZS5V2B2DR1*MTc0MTU4OTU0Ni45MS4xLjE3NDE1ODk4OTQuMC4wLjEyOTUxOTQ5MDQ.

重力の捉え方が変化してきている

重力の捉え方が変化してきている
重力の捉え方が変化してきている / Credit:Canva

重力を「空間と時間の曲がり」と考えるのは、ニュートン力学から一大飛躍を遂げたアインシュタイン以来の見方です。

一方、ブラックホールが持つエントロピーや、そこから放出されるホーキング放射が明らかになると、重力と“情報”や“熱”的な概念との奇妙な結びつきが注目を浴びてきました。

ブラックホールの表面積がエントロピーと関係すると言われるように、どうやら見た目の「曲がり」だけでは片づけられない深い構造が隠れているらしいのです。

つまり

従来:空間の曲がりとして重力を解釈してきた

近年:情報や熱的な概念などエントロピーから重力を解釈する

と変化してきたのです。

とはいえ、アインシュタインが提示した「時空の曲がりが重力を生み出す」という考え方自体を否定しているわけではありません。

「重力の背後にある仕組みとして、エントロピーや量子情報の概念が深く関わっている可能性がある」という見方が近年いっそう注目されている、という状況です。

たとえばブラックホールの“表面積”に比例するとされるエントロピーは、量子情報理論との関わりを強く示唆し、実際にホログラフィック原理を通じて、ブラックホール内部の重力現象を境界の量子系で記述する枠組みも提案されています。

量子情報理論には、私たちが通常の生活であまり触れない考え方がたくさんあります。

その一つが「量子相対エントロピー」という指標で、量子状態の違いを測る“距離”のようなものです。

これまで、この概念は量子ビットの世界やブラックホールの情報パラドックスなどに使われてきましたが、「そもそも時空そのものを“量子の状態”みたいに扱えないか?」という大胆な発想が浮上しています。

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