重力の捉え方が変化してきている

重力を「空間と時間の曲がり」と考えるのは、ニュートン力学から一大飛躍を遂げたアインシュタイン以来の見方です。
一方、ブラックホールが持つエントロピーや、そこから放出されるホーキング放射が明らかになると、重力と“情報”や“熱”的な概念との奇妙な結びつきが注目を浴びてきました。
ブラックホールの表面積がエントロピーと関係すると言われるように、どうやら見た目の「曲がり」だけでは片づけられない深い構造が隠れているらしいのです。
つまり
従来:空間の曲がりとして重力を解釈してきた
近年:情報や熱的な概念などエントロピーから重力を解釈する
と変化してきたのです。
とはいえ、アインシュタインが提示した「時空の曲がりが重力を生み出す」という考え方自体を否定しているわけではありません。
「重力の背後にある仕組みとして、エントロピーや量子情報の概念が深く関わっている可能性がある」という見方が近年いっそう注目されている、という状況です。
たとえばブラックホールの“表面積”に比例するとされるエントロピーは、量子情報理論との関わりを強く示唆し、実際にホログラフィック原理を通じて、ブラックホール内部の重力現象を境界の量子系で記述する枠組みも提案されています。
量子情報理論には、私たちが通常の生活であまり触れない考え方がたくさんあります。
その一つが「量子相対エントロピー」という指標で、量子状態の違いを測る“距離”のようなものです。
これまで、この概念は量子ビットの世界やブラックホールの情報パラドックスなどに使われてきましたが、「そもそも時空そのものを“量子の状態”みたいに扱えないか?」という大胆な発想が浮上しています。