かつて交わらなかった2種が出会うまで

青色の羽をもつ「アオカケス(学名:Cyanocitta cristata)」は北米東部を代表する小鳥で、郊外の庭や公園でもよく見られる身近な存在です。
一方、胴体が緑色の羽毛で覆われる「グリーンジェイ(学名:Cyanocorax luxuosus)」は中米やメキシコに生息する熱帯性のカケスで、羽の緑と青の美しさからバードウォッチャーに人気の高い鳥です。
ところが、この2種は長い進化の歴史の中で分布域を大きく隔てて暮らしてきたため、自然界で出会うことはありませんでした。

状況が変わったのは20世紀後半以降です。
気候の温暖化によって、熱帯性のグリーンジェイは南テキサスへ北上を始め、逆にアオカケスは西へと分布を広げてきました。
その結果、サンアントニオ周辺で両者の生息域が重なるようになったのです。
1950年代には両者の繁殖地は200キロ以上離れていたことを考えると、わずか数十年での劇的な変化といえます。
研究チームは、SNS上のバードウォッチャーの投稿から「奇妙な青い鳥」の存在に気づきました。
黒いマスク模様と白い胸を持ちながら、アオカケスともグリーンジェイとも違う姿。
その個体は2023年、研究者によって捕獲され、血液サンプルが採取されました。