Credit:OpenAI
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温暖化で湖の水温が41℃!? アマゾンでイルカが大量死

2025.11.15 12:00:20 Saturday

夏が「暑すぎ」て、地球の気候変動のヤバさを感じている人は多いでしょう。

けれどその暑さは、地面の上だけの話ではありません。

ブラジル北部アマゾン川流域のテフェ湖(Lake Tefé)で、2023年秋に数百頭もの淡水イルカが一斉に命を落とすという衝撃的な事件が起きました。

湖面にはピンク色のアマゾンカワイルカや灰色のトゥクシ(アメマス)が次々と浮かび上がり、地元の人々や研究者が呆然と立ち尽くしたといいます。

当初はウイルスや水質汚染などさまざまな可能性が取り沙汰されましたが、調査が進むにつれ、湖の一部では人でさえ長時間浸かっているのはキツイ41℃という異常な水温が記録されていたことが明らかになります。

もはや温泉状態ですが、なぜ湖の水がそこまでの高温に熱せられたのでしょうか?

その謎を解くために、ブラジルのマミラウア研究所(英:Mamirauá Institute for Sustainable Development/葡:Instituto de Desenvolvimento Sustentável Mamirauá)を中心とする国際研究チームは、現地観測と衛星データを組み合わせて原因の特定に挑みました。

この研究の詳細は、2025年11月付けで科学雑誌『Science』に掲載されています。

Extreme warming of Amazon waters in a changing climate https://doi.org/10.1126/science.adr4029

なぜ湖は温泉状態になったのか?

研究者たちはまず、「なぜテフェ湖の水温がここまで上昇したのか」「それは偶然なのか、それとも気候変動の兆候なのか」を確かめるため、現地での精密観測を行いました。

アマゾン流域はもともと高温多湿で日射も強い地域です。

しかし通常であれば、昼に温まった湖の表面は夜のあいだに冷やされ、熱が空気中に逃げることで湖全体の温度が安定します。そのため、日中がいくら暑くても、湖全体が“お湯”のように熱くなることはありません。

ところが近年、干ばつの影響で湖の水位が下がり、水深が浅くなっていました。浅くなると太陽光が湖底まで届きやすくなり、熱が湖全体にすぐ伝わってしまいます。

さらに、この干ばつで湖底の泥が舞い上がって水が濁っていたため、太陽光を効率よく吸収しやすい状態になっていました。

加えて、2023年は晴天が続き、風も弱まっていました。風が少ないと水面からの蒸発や熱の放出が進まず、夜間の冷却もほとんど効かなくなります。昼に受けた太陽の熱が夜にリセットされず、翌日に持ち越されて積み重なる、というサイクルが何日も続いていたのです。

2023年の事例では、雲のない日が11日間続いたと報じられており、その結果、湖の水温は数十日掛けて40度近くに達し、淡水生物の生存限界を大きく超える状態になったと予想されるのです。

チームはアマゾン各地の湖で、水温、風速、日射量、水深、濁度を高精度センサーで測定しました。とくに水深2メートル前後の湖では、昼間の水温が急上昇し、夜になっても十分に冷えきらない状態が続いていました。

それでも、昼と夜の温度変動は最大13℃に達しており、この激しい水温の変動は、湖の生物にとって極めて過酷な状況となっていました。

次ページ湖でイルカたちの死骸発見が6週間にわたって続いた

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