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鳥インフルエンザ発生後にミナミゾウアザラシの繁殖個体が激減する / Credit:Canva
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鳥インフルエンザ発生後、繁殖中の雌ミナミゾウアザラシの数が47%減少

2025.11.17 06:30:12 Monday

鳥インフルエンザは、私たちが感じている以上に恐ろしいものかもしれません。

南極に近い孤島サウスジョージア島。

この場所では、地球上最大級のアザラシが何万頭も集まり、毎年、命の営みを繰り返してきました。

しかし2024年、その光景が一変します。

英国南極調査局(British Antarctic Survey)などの国際研究チームによって、高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)の流行直後に実施した最新の調査で、「繁殖中の雌ミナミゾウアザラシが平均47%も減少した」という衝撃的な結果が明らかになったのです。

本研究の詳細は、2025年11月13日付の『Communications Biology』誌に掲載されました。

Avian Flu Wipes Out Nearly Half of Breeding Elephant Seals at World’s Largest Colony https://www.zmescience.com/ecology/animals-ecology/avian-flu-wipes-out-nearly-half-of-breeding-elephant-seals-at-worlds-largest-colony/ Severe impact of avian flu on southern elephant seals https://www.bas.ac.uk/media-post/severe-impact-of-avian-flu-on-southern-elephant-seals/
Highly Pathogenic Avian Influenza Viruses (HPAIV) Associated with Major Southern Elephant Seal Decline at South Georgia https://doi.org/10.1038/s42003-025-09014-7

ミナミゾウアザラシの王国を「鳥インフルエンザ」が襲う

ミナミゾウアザラシ(Mirounga leonina)は、地球上で最も大きなアザラシであり、オスは体長6メートル・体重4トンを超えることもあります。

南半球の冷たい海を自由に泳ぎ回るこの動物たちは、毎年決まった季節になると南極周辺のいくつかの島に上陸します。

その最大の集結地が南大西洋のサウスジョージア島です。

この島の浜辺には、繁殖期になると何万頭ものゾウアザラシが大集合します。

オスは先に上陸してなわばりを構え、続いてやってくる妊娠したメスたちを巡って激しい争いが繰り広げられます。

メスは到着から数日で出産し、約3週間で子どもを育てたのち、次の妊娠のために再び交尾をします。

この「一斉上陸」「集団出産・育児」は毎年決まった場所・時期で繰り返されてきました。

サウスジョージア島のミナミゾウアザラシ集団は、全世界の繁殖個体の約半数を占める、地球でも最大級の繁殖コロニーです。

しかしこの安定した自然の営みが、2023年以降、大きく揺らぎました。

きっかけは、高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)の南極圏到達です。

このウイルスは2020年ごろからヨーロッパで鳥類に猛威を振るい、やがて北米・南米へと渡り、ペンギンやアシカ、さらには哺乳類であるオットセイやゾウアザラシにも感染が拡大していきました。

2023年にはサウスジョージア島でも、まずカモメの仲間であるトウゾクカモメ科で感染が確認され、数か月遅れてアザラシでも感染が公式に報告されました。

研究チームは、「ウイルスの実態と影響を正確に把握する」ことを目的に、従来型の現地調査に加え、最先端のドローン技術を投入。

2024年に島内3つの最大コロニーを上空から撮影し、超高解像度画像を使って繁殖中のメスを一頭ずつカウント、2022年と比較しました。

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