地球の磁気バリアに「大穴」――ここ11年で急拡大していた模様
地球の磁気バリアに「大穴」――ここ11年で急拡大していた模様 / Credit:Core field changes from eleven years of Swarm satellite observations
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地球の磁気バリアに「大穴」――ここ11年で急拡大していた模様

2025.11.17 21:00:17 Monday

デンマークのデンマーク工科大学(DTU)とフランスのグルノーブル・アルプ大学(UGA)を中心とした国際研究によって、南アメリカから南大西洋にかけて存在する地球磁場の弱い領域が過去11年間で急拡大してきたことが観測されました。

地球磁場は人工衛星を守るシールドとしても機能しており、磁場の弱点部分の拡大は人工衛星の機能停止リスクを高くする可能性があります。

かつてオゾンホールの拡大が世界を揺るがす事件となっていましたが、地球磁場の弱点拡大はどんな要因によるものなのでしょうか?

研究内容の詳細は2025年9月18日に『Physics of the Earth and Planetary Interiors』にて発表されました。

Core field changes from eleven years of Swarm satellite observations https://doi.org/10.1016/j.pepi.2025.107447

オゾンホールの次は「磁場ホール」?

オゾンホールの次は「磁気ホール」?
オゾンホールの次は「磁気ホール」? / Credit:Canva

私たちの日常生活は、見えない技術によって支えられています。

夜空を見上げると、実際には見えなくても、そこには通信や気象観測、GPS(位置情報サービス)などで活躍する無数の人工衛星地球を取り巻いています。

これらの衛星が宇宙という極めて過酷な環境の中でも正常に働き続けられる理由の一つは、地球を包む磁場がまるで透明な盾のように私たちの惑星を守っているからです。

ところが、この地球を守る磁場の「盾」は、すべての場所で均一というわけではありません。

実は、地域によって磁場の強弱にかなりのムラがあります。

一般に、北極や南極に近い地域では磁場が強くなり、赤道付近では相対的に弱くなる傾向があります。

そうした地球磁場の中でも、特に弱くなっている場所が存在します。

南米から大西洋を経てアフリカの南西付近にかけて広がる領域で、この部分は「南大西洋異常(SAA)」と呼ばれています。

これはあたかも盾に空いた「大きな穴」のようなもので、この領域を通る人工衛星にとってはまさに危険地帯です。

実際にこのSAA領域を通る衛星では、コンピューターの誤作動や通信が一時的に途絶えるブラックアウト、さらに電子回路が破損するリスクが増えることが知られています。

また、宇宙飛行士が宇宙空間で活動をする際にも、SAAを通過すると普段よりも多くの放射線を浴びる危険性があると報告されています。

こうした危険性は以前からよく知られていたもので、宇宙開発においてSAAは昔から「困った存在」として認識されてきました。

しかしそもそもなぜ、この場所に限って磁場が極端に弱くなってしまったのはよくわかっていませんでした。

そこで今回、研究チームがこの問題に再び本格的に挑むことになりました。

もしも地球を守る磁気バリアの「薄い部分」の正体や原因が明らかになれば、衛星の安全管理や宇宙開発をさらに安全に進めるための重要な手がかりになるはずです。

地球の磁場の弱い領域・南大西洋異常は、いったいどのようにして生まれ、なぜここまで広がってしまったのでしょうか?

オゾンホールのように人間の活動が原因だったのでしょうか?

次ページ地球磁場に広がる「穴」、衛星を守れるのか?

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