ヒマラヤに眠っていた「海底超巨大噴火」の痕跡
ヒマラヤに眠っていた「海底超巨大噴火」の痕跡 / Credit:Canva
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ヒマラヤに眠っていた「海底超巨大噴火」の痕跡を発見

2026.02.03 22:00:34 Tuesday

中国の吉林大学(Jilin University)で行われた研究によって、ヒマラヤがあるチベット高原の岩石の中から「超巨大な海底火山噴火」の証拠が見つかりました。

この噴火がおきたのは2億5000万~2億800万年前の三畳紀にあたる時代であり、この時期に起きた「海の大量絶滅」の時期とぴったり重なっていることがわかりました。

つまり、三畳紀の海で起きた「絶滅イベント」のいくつかは、隕石でも陸上の火山でもなく、「深い海の底でひそかに起きた大噴火」が引き金だったかもしれないのです。

海底噴火はそれがいくら巨大でも、その痕跡はプレートの沈み込みによって失われてしまいますが、海の底にあった世界一高い山にはその記録が刻まれていたのです。

研究内容の詳細は2026年1月20日に『Geology』にて発表されました。

Marine large igneous provinces: Key drivers of Triassic recurrent extinction https://doi.org/10.1130/G53406.1

世界一高い山が教えてくれた海底火山噴火

チベット高原
チベット高原 / Credit:Google Earth

地球の生命の歴史は、なめらかに増え続けたわけではなく、ときどき「ドン」と叩き落とされるような大量絶滅によって何度も中断されてきました。

これまでの研究によれば、約5億4千万年前から現在までだけでも、大小あわせて160回以上もの絶滅イベントが記録されていると報告されています。

その中でも約5000万年続いた三畳紀は、かなり変わった時代です。

というのも、この時代は始まりと終わりの両方が「大量絶滅」で区切られている、唯一の地質時代だからです。

始まりは約2億5,200万年前のペルム紀末大量絶滅で、このとき海の生き物の種の9割近くが死に絶えたとされ、陸上でも多くの生物グループが消え、古生代型の生態系はほぼ壊滅しました。

その直後の初期三畳紀は、「ほとんど更地になった地球で、生き残りの少数派がなんとか立て直しを始める時期」と言えます。

一方、終わりには約2億160万年前ごろの三畳紀末大量絶滅が起き、それまで繁栄していたワニの仲間の一部や大型の両生類、一部の海生爬虫類、アンモナイトのグループなどが姿を消しました。

こうしてライバルが一掃されたことで、比較的被害の少なかった恐竜がジュラ紀には一気に多様化し、「恐竜の時代」がさらに加速したと考えられています。

大量絶滅の原因としては恐竜の時代を終わらせた隕石が有名ですが、実は巨大噴火も同等かそれ以上に大量絶滅に関わっている場合もあります。

大量絶滅を引き起こす巨大噴火は「富士山の噴火」のような通常の噴火とは異なり、地球の深いところから「マントルプリューム」とよばれる巨大な熱い物質の柱が上がってきて、短い時間のあいだに、とてつもない量のマグマが噴き出す現象のことです。

これがどれほど凄まじいものかを簡単にたとえると、富士山の噴火が「富士山」という1つの山の噴火だとしたら、大量絶滅を引き起こす「マントルプリューム」(地球の内部から上がってくる巨大な熱い物質の柱)は地球そのものの噴火(地球山の噴火)と言える規模感の現象と言えます。

こうした「大陸での大規模火成活動」は、地球史上の五大絶滅のうち少なくとも三つに関わっていると考えられてきました。

今回の舞台になる三畳紀も巨大噴火とは切り離せません。

大量絶滅で挟まれた三畳紀の始まりには現在のシベリア地域にあたる場所で起きた超大規模噴火(シベリア・トラップ)が、二酸化炭素や有毒ガスを大量に放出し、急激な温暖化や海の酸素不足、海洋酸性化などを引き起こしたことが主な原因と考えられています(ペルム紀‐三畳紀境界:P–T境界)。

また三畳紀の終わりには、パンゲア大陸の裂け目に沿って形成された中央大西洋マグマ大陸(CAMP)での超大規模な火山活動が有力視されており、ここでも膨大な二酸化炭素による温暖化、海洋の酸素不足、海の酸性化などがいっせいに起きたと考えられています(三畳紀‐ジュラ紀境界:T–J境界)。

しかし同じような大規模火成活動が、海の底で起きた場合はどうでしょうか。

深さ二千〜四千メートルほどの深海で大量のマグマが噴き出すと、海底には「海洋高原」や「海山列」とよばれる巨大な火山の台地ができます。

ところが、海の底のプレートは、やがて大陸の下にもぐりこむ「沈み込み」を起こし、多くの部分がマントルの中へとリサイクルされてしまうのです。

大陸上の溶岩台地は何億年も残りやすいのに対して、海洋高原や海山列は、プレートごと飲み込まれてしまうため、あとから探し出すのがとてもむずかしいのです。

そこで「ヒマラヤ山脈を含むチベット高原がかつて海の底にあった」という多くの人が知る知識が着目されました。

チベットの中央部には、かつての海洋島や海山、海洋高原の「かけら」が帯状に分布しています。

またこれらの岩石は大陸の近くの浅い海ではなく、陸から遠く離れた深い海で形成されたものでした。

つまりチベット高原は、「三畳紀の深海博物館」として、とても貴重な役割を果たしているのです。

そこで今回研究者たちは、それらの岩石の年代や成分、そして世界各地の海底堆積物に記録された環境変化のデータをていねいに分析しました。

もし見つかりにくい「海底の巨大噴火」が起きていれば、この博物館の内部にその痕跡が隠されている可能性があったからです。

次ページ散々な三畳紀と海底火山の関係

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