空気中の二酸化炭素を「石の鎧」に変えるアリが発見される
空気中の二酸化炭素を「石の鎧」に変えるアリが発見される / Credit:Honjie Li
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空気中の二酸化炭素を「石の鎧」に変えるアリが発見される

2026.03.17 19:30:23 Tuesday

中国の浙江大学(ZJU)とアメリカのウィスコンシン大学(UW)などの国際共同研究によって、菌を育てて暮らすアリ「セリコミルメックス・アマビリス」が、巣の空気中の二酸化炭素(CO2)をとらえ、自分の体をおおう「石のよろい」に変えていることが示されました。

この石のよろいは、髪の毛の太さの何分の一かという薄さの層となって、働きアリの外骨格のほぼ全体を広くおおっています。

その中の炭素を調べると、空気由来であることが分かり、さらに成分と並び方の点で「ドロマイト」という炭酸塩の岩石にとても近い性質を持つことも示されています。

ドロマイトは、自然界では山や岩として見つかる一方で、低い温度の水の中ではなかなかできないため、地質学の世界で長年議論されてきた“やっかいな鉱物”です。

研究では、アリの体のいちばん外側にあるこの石の層が、地下の巣でたまりやすい二酸化炭素を取りのぞく役目を持ちながら、同時に他のアリとの争いや病原菌から身を守る装甲として働いている可能性があると記述されています。

菌を育てるアリは、葉や花びらを集めて地下でキノコのような菌を栽培し、その菌を主なえさにして生活していますが、その暮らしぶりの裏側で、空気とからだの両方の問題を一つのしかけで処理しているように見えるのです。

では、どうして小さなアリが、地球の長い歴史の中で何百万年もかけて進むような「二酸化炭素が石になる」という反応を、自分の体の上で常温のまま実現できているのでしょうか。

そして、その知恵から私たちは何を学ぶことができるのでしょうか。

研究内容の詳細は、2026年1月22日に生命科学のプレプリント公開サイト「bioRxiv」にて発表されました。

Carbon dioxide sequestration into biomineral armor by ants https://doi.org/10.64898/2026.01.21.700952

石の鎧をまとったアリがいる

石の鎧をまとったアリがいる
石の鎧をまとったアリがいる / 天然のドロマイト鉱石(CaMg(CO3)2)/Credit: Didier Descouens, via Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0

二酸化炭素という言葉を聞くと、多くの人は「温暖化の原因」「減らさなければならない悪者」というイメージを持つと思います。

しかし地球全体で見ると、二酸化炭素は長い時間をかけて岩石の中に閉じこめられ、むしろ気候を安定させてきた重要なしくみの一部でもあると考えられています。

地球にある炭素の多くは、石灰岩やドロマイトなどの「炭酸塩の岩」という形で、何百万年ものあいだ眠っているのです。

一方、植物や動物の体に入った炭素は、呼吸や腐敗によって数日から数百年ほどで空気に戻っていきます。

これはいわば「短期預金」の炭素であり、岩石としてたくわえられた炭素は「超長期の定期預金」のような存在です。

二酸化炭素を石の形に変えてしまうことは、地球規模ではこうした長期預金を増やすことにつながります。

そのため、最近では人間の社会でも「二酸化炭素を石にして閉じこめる技術」が気候変動対策として研究されています。

生き物の世界でも、サンゴや貝が炭酸カルシウムから殻や骨格を作るなど、「からだの中で石を作る技術」がいくつも知られています。

その中でも数年前、大きな注目を集めたのが葉切りアリの一種です。

このアリの働きアリは、高い割合のマグネシウムをふくむ炭酸カルシウムの層を外骨格の外側にまとい、そのおかげで他のアリとの戦いや病原菌との闘いで有利になることが報告されました。

今回の主役、セリコミルメックス・アマビリスも同じ「菌類栽培アリ」の仲間です。

彼らは葉や花びらをせっせと運び、地下の巣でキノコのような菌を育て、その菌を主食として暮らしています。

巣は粘土質の土の中に連なった部屋からなり、換気がよくありません。

そのため、多くのアリと菌が呼吸することで二酸化炭素がたまりやすく、ときには生き物にとって有害なレベルに近づくと考えられています。

研究者たちは以前から、このアリの体表が白っぽく見えることに気づいていました。

X線を使って内部を三次元的にのぞくと、外骨格のさらに外側に、密度の高い薄い層がほぼ全身をおおっていることが分かりました。

しかし、その石の層がどこから炭素を得ているのか、葉切りアリのように細菌の助けを借りているのかどうかは分かっていませんでした。

そこで今回研究者たちは、「セリコミルメックス・アマビリスの外側にある石の層の炭素は、巣の空気中の二酸化炭素に由来しているのか」「地下の巣の空気が本当にそのまま鎧にリサイクルされているのか」を確かめることを目的としました。

とくに、小さなコロニーに特別な印を付けた二酸化炭素をふくむ空気を送りこみ、その印が時間とともにどこへたまっていくのかをていねいに追いかけることで、その流れをとらえようとしました。

本当に、地下の巣の空気にふくまれる二酸化炭素が、アリの体の上で「石のよろい」へと姿を変えるようなことが起きているのでしょうか。

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