空気中の二酸化炭素を「石の鎧」に変えるアリが発見される
空気中の二酸化炭素を「石の鎧」に変えるアリが発見される / Credit:Honjie Li
biology

空気中の二酸化炭素を「石の鎧」に変えるアリが発見される (2/3)

2026.03.17 19:30:23 Tuesday

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巣の空気は本当に“鎧”になっていたのか?

巣の空気は本当に“鎧”になっていたのか?
巣の空気は本当に“鎧”になっていたのか? / X線顕微鏡で測定した鉱物層の厚さは7~20 μmで、背側は一般的に腹側よりも厚い。茶色は鉱物がないことを示し、緑から黄色の色スケールは鉱物層の厚さ(μm)を示す。/Credit:Carbon dioxide sequestration into biomineral armor by ants

そんなことは本当にあるのでしょうか。

答えを得るために研究者たちはまず、小さなアリのコロニーを気密容器(空気が漏れない容器)に入れ、「重い炭素」の印をつけた特別な二酸化炭素をふくむ空気を送りこむ実験を行いました。

この印のついた二酸化炭素を取りこんで石の材料にすると、その印が鎧の中にたまっていくはずだ、という考えです。

同時に、「どのアリがどれくらい石のよろいを身につけているのか」も調べました。

その結果、若い働きアリやオスにはほとんど石が見られず、巣のゴミ山に捨てられた死んだ働きアリの体には、分厚い石の層が残っていることが分かりました。

地下の菌園には炭酸塩の石はほとんどなく、石は主に成熟した働きアリの体の表面に集中していました。

箱の中の二酸化炭素の濃さと、鎧に入っていく重い炭素の量をくらべると、二酸化炭素の濃さが高いほど、また時間が長いほど、鎧の中にたまる重い炭素が増えることが分かりました。

しかも、実験を始めて三十分という短い時間ですでに、鎧の中の重い炭素が少し増え始めていました。

これは、巣の空気中の二酸化炭素が、短い時間で石に変わり始めることを意味します。

では、その重い炭素は鎧のどこに、どのような形で入っているのでしょうか。

研究者たちは、アリの体を薄く切って断面を作り、表面から内側へ向かって重い炭素の分布を調べました。

その画像を見ると、重い炭素は外骨格のさらに外側にある石の層にくっきりと集中しており、内側の外骨格の本体側にはあまり入っていませんでした。

さらに、固体の中の分子の状態を調べる方法を用いると、二酸化炭素がいったん重炭酸という中間的な形になり、そこから炭酸塩の石へと変わっていることも示されました。

巣の空気中の二酸化炭素が体表で化学反応を起こし、石の材料になっていることを直接示す証拠です。

次に研究者たちは、「その石そのものは何でできているのか」をくわしく調べました。

電子顕微鏡で見ると、アリの体表には小さなひし形の結晶がびっしりとならび、その断面を詳しく調べると、カルシウムとマグネシウムが交互の層を作るように部分的に並んでいることが分かりました。

さらに、光を当てて結晶の振るえ方を見る方法や、粉末にしてX線を当てる方法でも、この結晶がドロマイトという炭酸塩の岩石とほぼ同じふるまいを示すことが確かめられました。

また鉱物層の厚さはおおよそ7~20 μmで、より防御で重要な背側は腹側よりも厚い傾向にありました。

成分を正確に測ると、この鎧はおよそ42〜45モルパーセントという高い割合のマグネシウムをふくみ、組成としても現代のドロマイトにとても近いことが分かりました。

また硬さを測ると、このアリの鎧はふつうの石灰岩より硬く、ドロマイトに近い値を示しました。

マグネシウムを多くふくむほど硬くなるという傾向も、他の試料とあわせて確認されています。

これらの結果をまとめると、地下の巣の空気中にふくまれる二酸化炭素が、アリの体のいちばん外側で重炭酸をへて炭酸塩の石に変わり、その石がカルシウムとマグネシウムをふくむドロマイトに近い鎧として広くまとわりついている、という流れが浮かび上がります。

カルシウムとマグネシウム自体は、アリが育てている菌やえさから取りこんだものが使われていると考えられますが、炭素については空気中の二酸化炭素が主要な供給源であることが示されました。

アリは、巣の中で増えすぎると有害になりうる二酸化炭素を、体の外側で石として固定しながら、自分の装甲も強化していると解釈することができます。

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