「主人・家内」は本当に男性優位なイメージを呼び起こすのか?
「主人」「家内」という言葉は、現在でも比較的よく使われる夫婦呼称語です。
しかし、その字義をよく見ると、かなり古い家族観がにじんでいるようにも見えます。
「主人」はもともと「主である人」「家のあるじ」を思わせる言葉です。
一方の「家内」は、文字通りには「家の内側」を連想させます。
そのため、この言葉の組み合わせは、夫を家庭の中心に置き、妻を家庭内に位置づけるような、男性中心的な価値観を反映しているのではないかと考えられてきました。
しかし、ここで一つ疑問が生じます。
言葉の字義が男性中心的に見えることと、実際にその言葉を使う人の心の中で男性優位的なイメージが働いていることは、同じなのでしょうか。
例えば「家内」と口にする人が、毎回「妻は家の中にいるべきだ」と考えているとは限りません。
長く使われてきた言葉は、元の意味が薄れ、単なる慣用的な呼び方として処理されている可能性もあります。
そこで研究チームは、アンケートで「差別的だと思いますか」と尋ねるのではなく、より無意識に近い反応を測る方法を用いました。
それが、「FUMIEテスト」であり、これは潜在連想テストを紙と鉛筆で実施できるようにした方法です。
考え方はとてもシンプルです。
人は、自分の中で自然につながっている組み合わせほど、素早く処理できます。
ある言葉が心の中で「良い」というイメージと結びついていれば、その言葉を「良い」側に分類する作業は比較的早く進みます。
反対に、その結びつきと逆の分類を求められると、処理にわずかな遅れが生じます。
FUMIEテストでは、この考え方を採用し、紙と鉛筆で潜在イメージを測るようにしています。
そして今回の研究では、東京農工大学の工学部・農学部学生246名が参加しました。
内訳は男子学生162名、女子学生84名です。
参加者はA3用紙に印刷された単語リストを見ながら、各行20秒の制限時間内に、できるだけ多くの単語を○や×で分類しました。
ある条件では「主人」に○、「家内」に×をつけます。
別の条件では、その逆に「主人」に×、「家内」に○をつけます。
同じように、「夫・妻」についても、「夫」を良い側、「妻」を悪い側に分類する条件と、その逆の条件が設けられました。
そして、どちらの組み合わせの方が速く処理できたかを比べることで、参加者の潜在イメージを調べました。
もし「主人・家内」が字義どおりに強い男性優位的イメージを呼び起こしているなら、「主人」を良い側に分類する課題の方が、明らかに早く進むはずです。
さらに、その偏りは、より中立的とされる「夫・妻」よりも大きくなると予想されます。
ところが結果は、単純な予想とは異なっていました。
「主人・家内」と「夫・妻」の潜在連想パターンには、有意な差が見られなかったのです。
つまり、少なくとも今回の若い大学生のサンプルでは、「主人・家内」は「夫・妻」よりも強く男性優位的な潜在イメージを引き起こしているとは言えませんでした。
ただし、ここで重要なのは、結果がそれだけでは終わらなかったことです。
より詳細な結果を見ていくと、夫婦呼称語そのものとは別に、男女で異なる潜在イメージの傾向が浮かび上がってきます。























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