サハラ砂漠に住む「盲目の部族」とその原因
世界最大級の砂漠「サハラ砂漠」は、アフリカ大陸の3分の1近くを占めており、アメリカ合衆国とほぼ同じ面積があるほど広大です。
サハラ砂漠全体の人口は約2500万人であり、そのほとんどは、モーリタニア、モロッコ、アルジェリアに住んでいます。
このアフリカ北西部に位置するモーリタニア(正式には、モーリタニア・イスラム共和国)には、首都ヌアクショットから東に約1000km離れた辺境の村「ダリ・ギンバ(Dali Gimba, ダリグンベとも呼ばれる)」があります。
この村は、村人の半数が盲目である「盲人の村」として知られています。
例えば村長の家系は、7~8世代にわたって遺伝性の失明が続いています。
それでも彼らは、厳しい砂漠環境で、村の中での生活をすべてひとりで行えます。
盲目であることを受け入れ、たくましく生きているのです。
では、どうしてこの村では先天盲が多いのでしょうか。
アメリカのハワイ大学マノア校(UH Mānoa)に所属する人類学者サキブ・A・ウスマン氏は、2017年以来、この盲目の村を訪れ、部族の生活を観察・研究してきました。
彼が執筆した2024年の論文では、モーリタニアの大学「USTM:Université des Sciences de Technologies et de médecine」の2018年の研究が引用されています。
その研究によると、これら部族の失明の原因は、先天性白内障だと判明しています。
先天性白内障とは、生まれながらに罹患する白内障であり、生まれた時から、もしくは生後しばらくして、瞳が白濁したり、斜視になったりします。
また検査によると、部族の人々には、常染色体優性遺伝が認められました。
常染色体優性遺伝では、両親のどちらか一方が変化のある遺伝子を持つ場合、50%の確率で次世代へ伝達されます。
そのため多くの世代が罹患してしまいます。
ダリ・ギンバの部族の多くが、何世代にもわたって盲目なのは、こうした遺伝性疾患が原因だったのです。
では、こうした事態を村人たちはどう感じているのでしょうか。