男子学生は、「主人・家内」「夫・妻」どちらの用語を使っても、男性優位な潜在イメージを持っている可能性
今回の研究で明らかだったのは、前述したように、「主人・家内」と「夫・妻」の差が見られなかったという点です。
この結果は、「主人・家内」という言葉が、慣用的な呼び方として処理されている可能性を示しています。
つまり、現代の若い話者にとって「主人」という言葉は、必ずしも毎回「家の主」を強く意識させるものではないのかもしれません。
「家内」についても同様に、「家の中にいる人」という字義が、そのまま潜在的な評価に反映されているわけではない可能性があります。
これは、日常語の性質を考えると分かりやすいかもしれません。
私たちは普段、言葉を一字一句の意味に分解して使っているわけではありません。
長く使われてきた表現ほど、元の意味よりも「そういう呼び方」として処理されることがあります。
「主人・家内」も、少なくとも今回の対象者では、字義がそのまま心の奥のイメージを動かしているわけではなかったと考えられます。
そして、この研究の重要な発見は、別のところにもあります。
それは、男子学生と女子学生の間に、はっきりした違いが見られた点です。
男子学生は、「主人・家内」の場合でも、「夫・妻」の場合でも、男性を指す語を女性を指す語よりも肯定的に処理する傾向がありました。
一方、女子学生では、そのような明確な差はほとんど見られませんでした。
この結果は、かなり興味深いものです。
なぜなら、問題が「主人・家内」という特定の言葉だけにあるわけではない可能性を示しているからです。
もし問題が「主人・家内」という言葉の字義だけなら、「夫・妻」に言い換えれば、潜在イメージの偏りは小さくなるはずです。
しかし実際には、男子学生では「夫・妻」という中立的な呼称でも、男性を指す語の方が肯定的に処理されていました。
つまり、言葉の表面を変えても、男性語に対する肯定的な潜在イメージそのものは残る可能性があるのです。
もちろん、より中立的な言葉を選ぶことに意味がないわけではありません。
ただ今回の結果は、言葉の表面を変えることと、心の奥にある男女イメージが変わることは、必ずしも同じではないことを示しています。
一方で、この研究には限界もあります。
まず、調査対象は東京農工大学の工学部・農学部学生で、年齢も20歳前後に限られています。
そのため、この結果を日本人全体にそのまま当てはめることはできません。
世代が違えば、「主人・家内」に対する受け止め方も変わる可能性があります。
研究チームは今後、異なる世代で同様の調査を進めるとともに、中国語版や韓国語版のFUMIEテストを作成し、他言語の夫婦呼称語についても潜在イメージの測定を行う計画を示しています。
この研究は、「主人・家内」という言葉を単純に白か黒かで判定するものではありません。
むしろ、言葉の字義、日常での慣用、そして心の奥に残る男女イメージが、必ずしも同じ方向を向いていないことを教えてくれました。























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