ADHD発症のメカニズム
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ADHDの発症メカニズムの一端を解明、「薬が効かない人」への治療の手がかりに

2026.09.17 20:00:22 Thursday

授業中、気づくと足が机の下で動いている。「じっとして」と言われても、次の瞬間にはまた動いている。

福井大学の研究チームは、線条体(脳の奥にある部分)のドーパミンが大きく減っているのに多動になるマウスを作りました。

背景にあったのは、ドーパミンを受け取る側の細胞が、生まれて間もない時期に失われることでした。

さらに、ADHD(注意欠如・多動症)の薬に別の薬を組み合わせると、多動と衝動性が和らぎました。

マウスでの結果ですが、ADHDの薬が効きにくい人の治療の手がかりになると研究チームは考えています。

研究内容の詳細は2026年9月15日に『Neuropsychopharmacology』にて発表されました

Regional brain volume predicts response to methylphenidate treatment in individuals with ADHD (BMC Psychiatry) https://doi.org/10.1186/s12888-021-03040-5 Methylphenidate-Elicited Dopamine Increases in Ventral Striatum Are Associated with Long-Term Symptom Improvement in Adults with ADHD (Journal of Neuroscience) https://doi.org/10.1523/jneurosci.4461-11.2012 Structural and Functional Brain Abnormalities in Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder and Obsessive-Compulsive Disorder (JAMA Psychiatry) https://doi.org/10.1001/jamapsychiatry.2016.0700 Evaluating Dopamine Reward Pathway in ADHD (JAMA) https://doi.org/10.1001/jama.2009.1308 Catecholamine Dysfunction in Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder (Journal of Clinical Psychopharmacology) https://doi.org/10.1097/jcp.0b013e318174f92a Evaluating Dopamine Reward Pathway in ADHD (JAMA) https://doi.org/10.1001/jama.2009.1308 発達障害の一つ「ADHD」、発症メカニズムの一端を解明 福井大研究チーム、新たな治療法の開発期待 https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/2699242
Deletion of N-ethylmaleimide-sensitive factor in dopamine D2 receptor-expressing cells impairs striatal development and dopaminergic function and induces ADHD-like behaviors in mice https://doi.org/10.1038/s41386-026-02526-8

ドーパミンが「減っている」のに動き回るマウス

ドーパミンが「減っている」のに動き回るマウス
ドーパミンが「減っている」のに動き回るマウス / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

この研究の主役は、マウスの脳で働くNSF(エヌエスエフ)というタンパク質です。

NSFは細胞の中で袋どうしをくっつけ、神経の信号のもとになる物質を外へ出す手伝いをしています。

そしてNSFは、ドーパミンを受け取る「D2受容体(じゅようたい)」というタンパク質と結びつくことが知られていました。

福井大学の研究チームは、D2受容体を持つ細胞だけでNSFを失わせたマウスを作り、多動と衝動性が出ることを見つけました。

比べたのは同じ親から生まれ、NSFを失わせる仕掛けが働かないマウスで、オスとメスの両方を使いました。

体中でNSFを失わせたマウスは、生まれる前に死んでしまいます。

学校全体の放送を止めるのではなく、ある教室のスピーカーだけ線を抜くような仕掛けです。

線条体(せんじょうたい)は、脳の奥にある部分で、神経細胞がたくさん集まっています。

ドーパミンを受け取るD2受容体を持つ細胞も、この線条体にたくさんあります。

線条体は、ご褒美や、やる気にかかわる場所とされています。

すると、NSFを失ったマウスの線条体では、D2受容体を持つ細胞が減っていました。

この細胞の減少とともに、生まれて間もない時期に細胞の死が増えていました。

線条体そのものも小さくなり、線条体のドーパミンの量は大きく減っていました。

D2受容体の細胞でNSFを失ったマウスの脳の変化
D2受容体の細胞でNSFを失ったマウスの脳の変化 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

ここまで読むと、「ドーパミンが減ったなら、おとなしくなるはず」と思うかもしれません。

ところが行動は、その逆でした。

多動と衝動性(後先を考えずに動いてしまう性質)という、ADHDに似た行動が出たのです。

研究チームは、ADHDの薬メチルフェニデートと、D2受容体を働かせる薬キンピロールを組み合わせて与えました。

すると、多動も衝動性も和らいだ。

この組み合わせは、薬が効きにくい人のADHDの治療を補う方法になりうる、と研究チームは考えています。

では、「受け取る側の細胞」が減ったマウスの結果は、人のADHDとどうつながるのでしょうか。

次ページ「薬が効きにくい人」のADHDと、どうつながるのか

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