病気と匂いには関連がある

にんにくを食べた翌日、息だけでなく汗まで匂う。
お酒を飲んだ翌朝、体じゅうが酒くさい。
体の中で起きたことが匂いになって外へ出てくるのは、誰もが知っていることです。
人間の体は、きちんと密閉された容器ではありません。
私たちは揮発性有機化合物(VOC)と呼ばれる、常温でも蒸発しやすい小さな分子を、絶えず放出しています。
これらは代謝の副産物で、汗、呼気、尿、唾液、皮脂など、さまざまな経路をたどって体の外へ出てきます。
食べたものや飲んだ薬でその組み合わせが変わるから、匂いも変わるのです。
だとすれば、代謝そのものを変えてしまう病気も、匂いに痕跡を残すはずです。
パーキンソン病には、よく知られた逸話があります。
ジョイ・ミルンという女性は、夫が診断を受ける何年も前から、夫の体からジャコウ(麝香)のような匂いがすることに気づいていました。
のちに彼女がこの病気の匂いを嗅ぎ分けられることが分かり、いまではパーキンソン病に特有の匂いのもとが、皮脂から探されています。
問題は、その匂いをどうやって機械で測るかです。
この分野の定番は、息でした。
呼気に含まれる匂いの分子を調べる研究は数多く、装置も整っています。
しかし呼気は、扱いが厄介でもあります。
運動、食事、服用している薬で中身が大きく揺れ、病気による違いがその揺れに埋もれてしまうからです。
かといって、皮膚をぬぐえばよいわけでもありません。
腕や首の皮膚は毎日石けんで洗われ、クリームや香水を塗られています。
そこで採れるのは、体の匂いと日用品の匂いが混ざったものです。
ここで浮かび上がるのが、外からの匂いが混ざりにくい場所です。
鼻の穴の入り口、耳の外側のくぼみ、そしておへそ。
この3か所は、腕や首にくらべれば、石けんや香水にさらされる機会がずっと少ないのです。
なかでもおへそは、体の匂いがたまる特別なくぼみです。
はがれ落ちた皮膚の細胞、皮脂、汗が少しずつ沈み、それを餌にする細菌が住みつきます。
毎日こすられる腕の皮膚が、しょっちゅう拭かれるテーブルだとすれば、おへそは動かさない家具の裏側です。

























