真菌を遺伝子改変して粉末卵白を生み出す
新しい卵白代替品を生み出すため、研究チームが最初に取り掛かったのは卵白の分析です。
卵白タンパク質の50%以上を占める主要タンパク質「オボアルブミン(略称:OVA)」の遺伝子コードを解析・特定することにしたのです。

次にオボアルブミンの設計図をもつ遺伝子を、糸状の真菌「Trichoderma reesei」に挿入。遺伝子改変させました。
これにより、真菌がオボアルブミンを分泌できるようにしたのです。
ちなみに、Trichoderma reeseiから分泌されたオボアルブミンは両方の名称を合わせて「Tr-OVA」と呼ばれています。
その後Tr-OVAは、濃縮・乾燥させることで、粉末状の製品となりました。
では、真菌から作られた乾燥卵白Tr-OVAは、従来の乾燥卵白と比べて、どのようなメリットがあるのでしょうか?
真菌から作られた乾燥卵白は泡立ちやすく環境にやさしい

研究チームはTr-OVAとフィンランドやドイツで生産された本物の乾燥卵白を比較テストしました。
その結果、Tr-OVAは本物の乾燥卵白とほぼ同等の品質を示すと判明。
特にメレンゲを作るときに必要な「泡立ちやすさ」は十分なものだったようです。
これまで植物性の卵白代替食材といえば、ひよこ豆の煮汁から作った「アクアファバ」でした。
しかしアクアファバは20分以上激しく泡立てなければ、ふわふわのメレンゲになりません。
Tr-OVAはアクアファバよりも素早く泡立ち、ケーキやプリンにふんわりとした食感を与えてくれるのです。
加えてTr-OVAであれば、従来の乾燥卵白を作成するのに必要なニワトリの飼育が必要ありません。
研究チームの調査によると、従来品からTr-OVAに変更することで、生産に必要な土地は90%削減され、温室効果ガスの排出量も31~55%削減できるとのこと。
今のところ、Tr-OVAの生産に必要なエネルギーは正確に算出できていませんが、チームは、養鶏場が必要とするエネルギーよりもはるかに少ないと考えています。
将来的には真菌から作られた粉末卵白が家庭やレストランで使用されるかもしれません。


















