真菌の遺伝子を改変して粉末卵白の代替品を生み出せる
真菌の遺伝子を改変して粉末卵白の代替品を生み出せる / Credit:Depositphotos
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卵不要 「遺伝子編集した真菌」を利用してメレンゲを作ることに成功

2022.01.23 18:00:52 Sunday

卵白はクセがなくタンパク質を多く含むため、食品業界になくてはならない食材です。

実際、2020年の卵タンパク質の年間消費量は約160万トンでした。

特に卵白を乾燥させて粉末化した「乾燥卵白(メレンゲパウダー)」は、ケーキやお菓子をつくるのに重宝されています。

高まる卵白の需要に対処するため、フィンランド・ヘルシンキ大学(University of Helsinki)農林学部に所属するナターシャ・ヤルビオ氏ら研究チームは、真菌から乾燥卵白の代替品を作り出しました。

ニワトリを飼育する必要がないため、環境にやさしく、土地を大幅に節約できます。

研究の詳細は、12月16日付の学術誌『Nature Food』に掲載されました。

Biotechnology could provide an environmentally more sustainable alternative to egg white protein production https://www.helsinki.fi/en/news/life-sciences/biotechnology-could-provide-environmentally-more-sustainable-alternative-egg-white-protein-production Out of cluck: Scientists create egg whites using fungus in the lab as an ‘environmentally sustainable’ alternative to farming chickens https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-10379489/Scientists-create-vegan-egg-whites-using-fungus.html
Ovalbumin production using Trichoderma reesei culture and low-carbon energy could mitigate the environmental impacts of chicken-egg-derived ovalbumin https://www.nature.com/articles/s43016-021-00418-2

真菌を遺伝子改変して粉末卵白を生み出す

新しい卵白代替品を生み出すため、研究チームが最初に取り掛かったのは卵白の分析です。

卵白タンパク質の50%以上を占める主要タンパク質「オボアルブミン(略称:OVA)」の遺伝子コードを解析・特定することにしたのです。

真菌Trichoderma reesei
真菌Trichoderma reesei / Credit:US Department of Energy Office of Science(Wikipedia)_Trichoderma reesei

次にオボアルブミンの設計図をもつ遺伝子を、糸状の真菌「Trichoderma reesei」に挿入。遺伝子改変させました。

これにより、真菌がオボアルブミンを分泌できるようにしたのです。

ちなみに、Trichoderma reeseiから分泌されたオボアルブミンは両方の名称を合わせて「Tr-OVA」と呼ばれています。

その後Tr-OVAは、濃縮・乾燥させることで、粉末状の製品となりました。

では、真菌から作られた乾燥卵白Tr-OVAは、従来の乾燥卵白と比べて、どのようなメリットがあるのでしょうか?

真菌から作られた乾燥卵白は泡立ちやすく環境にやさしい

真菌由来のオボアルブミン「Tr-OVA」は泡立ちやすい
真菌由来のオボアルブミン「Tr-OVA」は泡立ちやすい / Credit:VTT Technical Research Centre of Finland_Biotechnology could provide an environmentally more sustainable alternative to egg white protein production(2021)

研究チームはTr-OVAとフィンランドやドイツで生産された本物の乾燥卵白を比較テストしました。

その結果、Tr-OVAは本物の乾燥卵白とほぼ同等の品質を示すと判明。

特にメレンゲを作るときに必要な「泡立ちやすさ」は十分なものだったようです。

これまで植物性の卵白代替食材といえば、ひよこ豆の煮汁から作った「アクアファバ」でした。

しかしアクアファバは20分以上激しく泡立てなければ、ふわふわのメレンゲになりません。

Tr-OVAはアクアファバよりも素早く泡立ち、ケーキやプリンにふんわりとした食感を与えてくれるのです。

加えてTr-OVAであれば、従来の乾燥卵白を作成するのに必要なニワトリの飼育が必要ありません。

研究チームの調査によると、従来品からTr-OVAに変更することで、生産に必要な土地は90%削減され、温室効果ガスの排出量も31~55%削減できるとのこと。

今のところ、Tr-OVAの生産に必要なエネルギーは正確に算出できていませんが、チームは、養鶏場が必要とするエネルギーよりもはるかに少ないと考えています。

将来的には真菌から作られた粉末卵白が家庭やレストランで使用されるかもしれません。

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